馬が牧場を離れるとき、牡馬なら『走って出世せえよ』と、牝馬なら『無事に帰って来いよ』と言って送り出すという。

「デアリングタクトもそう。こんなに走れだなんて、俺は言わなかったぞ(笑)」(同前)

 その馬が三冠レース第1弾の桜花賞で優勝。4コーナーでは12番手だったが、直線で一気に伸びた。

「飛んできたよね、羽がついたみたいに。勝つなんて思ってなかったから、ひっくり返りそうになった。その日の夜は、牧場に花は届くし、酒は届くし。他の牧場の人たちも駆けつけて来てくれたし、町長さんまでやって来た。こっちはなんも準備してなかったから、謝ったよ。役場には垂れ幕までかけられてねえ。GIを勝つのって、こういうことなんだと。嬉しかったのは嬉しかったけど、それよりも驚きの方が大きかったなあ。ほんと夢みたいだった」(同前)

 オークスも秋華賞も勝って三冠馬になった。役場の垂れ幕は3本に。ジャパンカップ後には4本目の垂れ幕も?

 前出の競馬記者によれば、デアリングタクトの優勝は十分にあるという。他の2強はそれぞれ不安要素を抱えているからだ。

「アーモンドアイは、走るローテーションと距離に不安が。いつも全力で走るので、十分に間隔をあける必要があるといわれています。初めて中2週で臨んだ安田記念では、グランアレグリアに2馬身半の完敗でした。今回も中3週しかありません。また、父のロードカナロアは短距離馬。アーモンドアイは年々、父の血統が濃く出てきているような気がします。2000mの天皇賞は勝ちこそしましたが、最後はフィエールマンにかわされそうでした」(競馬記者)

 一方のコントレイルは、疲労が懸念されるという。

「前走の菊花賞は適距離ではない3000m。最後の直線でアリストテレスと激しい叩き合いをしました。その疲れが残っているかもしれません。実際、18日の追い切りの内容は、コントレイルらしくないものでした」(同前)

 では長谷川社長の予想は?

「俺、馬券は買わないんだよね。だから予想なんて無理(笑)。うちで生まれた馬がジャパンカップに出るなんて夢みたいな話。それもアーモンドアイとコントレイルと一緒でしょう。もし破ったら大変なこと。番狂わせなんてもんじゃないよ。母ちゃんと2人でテレビ観戦するつもりだけど、掲示板に乗れば(5着以内)十分ですよ」

 エリート対叩き上げ。3強激突の結末は?

(本誌 菊地武顕)
※週刊朝日オンライン限定記事