帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「戦略的直観を磨こう」。

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【ひらめき】ポイント
(1)医学と医療は違う。医療には戦略が必要とされる
(2)すぐれた戦略は直観によって生まれる
(3)先例を頭に入れ、平常心に戻れば、ひらめく

 医学と医療はときに混同されます。しかし、両者は明らかに違っています。医学は病と闘うための“武器”。ですから、医学の進歩とは武器の能力を高めることです。ただ、武器の能力が向上するだけでは、病には勝てません。それをいかに使うかというところが大事なのです。それを含めた闘い方が医療です。医学が個々の“戦術”であれば、医療は全体的な“戦略”であるとも言えます。

 医師は医学という戦術を身につけていなければなりませんが、それ以上に病に対する戦略を持つ必要があります。そして、そのときのすぐれた戦略は直観によって生まれるのだと私は思っています。

『戦略は直観に従う』(ウィリアム・ダガン著、杉本希子・津田夏樹訳、東洋経済新報社)という本があります。コロンビア大学MBAの講義を書籍化したもので、このなかでダガン博士は人類史上に見られる様々な発見・功績に共通する原動力は「戦略的直観」であると述べています。戦略的直観の成功例として挙げられているのは、コペルニクスの地動説、ナポレオンのヨーロッパ征服、仏陀(ぶっだ)の悟り、ビル・ゲイツ(マイクロソフト)の成功などです。

「戦略的直観は、漠然とした予感や本能的な直観のような『単なる直観』とは一線を画す。単なる直観とは感情の一形態であり、思考ではなく感覚である。戦略的直観はその正反対の概念で、感覚ではなく思考なのだ」(同書)と博士は指摘します。そしてその「明確で傑出した思考をもたらす突然のひらめきが、人々の脳裏にある霧を晴らす」というのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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