価値観の違う人への攻撃を問題視するのは、「大人力」に関する著書を多数執筆するコラムニストの石原壮一郎さん。「分断」と「不寛容」が進んだと感じている。

「白黒はっきりつけないと気が済まない、曖昧さを許さない、という傾向が、コロナ禍で非常に強くなりました。自粛警察、マスク警察、県外ナンバー警察らが張り切って活動しました。独りよがりの正義を実現するために、たたく相手を探しているようにさえ見えます。電車内でのマスクの着け方をめぐり、催涙スプレーを噴射する事態まで起きました。小さな『気に入らない』が、大きな間違いを引き起こしているわけです」

 さらに、東京対地方という分断も生まれた。

「いまだに帰省しないでくれと願う親もあるようです。ニュースでは連日、『東京で200人』と感染者状況を伝えますよね。1400万人の中の200人にすぎないけど、地方の人にとっては200人と聞くと大変な数で、不安になるわけです。東京を嫌う人はもともと一定数いますが、コロナで堂々と嫌う口実ができ、東京差別が露呈しました」(石原さん)

 コロナ禍にあって、IT化の遅れが指摘された。それを是正しようという動き自体は決して悪いわけではないとしつつ、石原さんは続ける。

「Go To ○○もオンライン○○も、ITスキルの高くない人には恩恵がありません。持続化給付金も、ネットを使っての申請の仕方が悪くて取りはぐれた人、面倒くさくて申請自体を諦めた人がたくさんいます。そこにも分断が出ました」

 西川さんは、持続化給付金については経済産業省から委託されたサービスデザイン推進協議会(サ協)の問題に憤る。

「前田泰宏中小企業庁長官は、テキサスで借りたアパートを前田ハウスと呼んでパーティーを主催。そこでサ協理事と会っていました。他にも首相補佐官は部下の女性と出張でコネクティングルームに泊まり、東京高検検事長は賭け麻雀をしても起訴されない。森友問題で自殺した財務省職員の遺書に『すべて佐川局長の指示です』と記されていても、再調査をしません」

 お咎(とが)めなしの上級国民への怒りが、菅義偉首相への当初の期待に繋(つな)がったと西川さんはみる。

「実際には違うようですが、秋田から集団就職で上京したといわれました。サラブレッドばかりの政治家の中で、共感を得られたのでしょう」

(本誌・菊地武顕)

週刊朝日  2020年11月27日号より抜粋