アベノマスク(右)/どんな困難も乗り越えていけると確信 (c)朝日新聞社
アベノマスク(右)/どんな困難も乗り越えていけると確信 (c)朝日新聞社

 コロナ禍の嵐が吹きすさんだ2020年も、残りひと月半足らず。週刊朝日編集部は“本家”新語・流行語大賞より少し早く、コロナ関連の今年の流行語を選びました。

【一覧表】週刊朝日が選ぶ コロナ禍の2020年流行語30はこちら

 人々の口の端に上った言葉は、やはりコロナ禍に関わるものが目立つ。世相に一家言ある識者3人がそれらにツッコミを入れた。(識者以外の肩書は、当時のもの)

「ソーシャル・ディスタンスを取る、密を避けるなど、生活に革命的変化を強いられたわけです。ただし政府のコロナ対策を通じて、上級国民と普通の人との乖離(かいり)が明確になりました。そのことが流行語にも表れています」

 と分析するのは、流行に詳しいマーケティングコンサルタントの西川りゅうじんさんだ。

「アベノマスクは天下の愚策。何百億円もの予算を使ってマスクを配るというのですから、最新技術を用いた最高性能の製品を配るのだと思いました。でも実際は、小学校の給食当番が着けるようなものでした」

 さらに、安倍晋三首相が星野源さんの「うちで踊ろう」に合わせ、ソファに座って犬を抱く姿をSNSに投稿したことについて言及する。

「総理と周辺の官僚は、市民感覚がわかっていません。あのレナウンが倒産するなど多くの企業が危機的な状況です。明日はわが身と思う人がたくさんいるのに、その現実に目を向けませんでした。マリー・アントワネットが『パンがなければお菓子を食べればいいじゃない』と言ったといわれる、ルイ王朝末期と同じぐらいひどいです」

 2005年に「おひとりさま(マーケット)」、09年に「草食系(男子)」が新語・流行語大賞にノミネートされたトレンド評論家の牛窪恵さんは、

「東日本大震災の直後もそうでしたが、不安な年には周りと緩いつながりを持つ事象が流行します。疫病退散を願いアマビエのイラストを描いてSNS上でリレーしていったり、ゲームの『あつまれどうぶつの森(あつ森)』で壁紙や家具をアレンジして『見て、見て!』と友人・知人と自慢し合ったり。一体感を味わうことで安心を得たいという心理が働いたのでしょう。ただ逆に、価値観の違う人を攻撃することでコミュニティーの結束を固めようという動きもあり、それが自粛警察となったのかもしれません」

 と、不安感が人々の動きに大きな影響を与えたと語る。

次のページ