トラブル続出のGoToトラベル(Getty Images)
トラブル続出のGoToトラベル(Getty Images)

  国内で11月12日に報告された新型コロナウイルス感染者数は1660人で、8月の1597人を上回り、過去最多を更新した。「第3波」が到来する中、GoToトラベル効果で全国の観光地は、人出が戻りつつある。

 だが、受け入れる側の山梨県の老舗温泉旅館の女将は複雑な表情でこう話す。
「お客様は増えて、ありがたい。しかし手間が増えて」

 この温泉旅館では週末は東京をはじめ首都圏の人で80%は埋まるという。満室の日もあるほど、回復した。だが、旅館業以外の作業が増えている。それがGoToトラベルをめぐる、事務作業だという。

 GoToトラベルは原則、宿泊代金が35%引きとなる。旅行代理店を経由した予約もあれば、旅館に直接、電話がかかることもある。前出の女将はこう話す。

「旅館への直接予約となると困ったことがあるのです。GoToトラベルの事務局に決まったフォーマットで35%分を申請するのですが、月末締めでその翌月の入金と遅いのです。月初めのお客様の場合、GoToトラベルの事務局からの支払いが3か月後という場合もあります。その遅さは旅館経営には致命的です。そのため、金融機関から借金をしてしのいでいる旅館さんもあります」

 大手旅行代理店の場合は、GoToトラベルの35%は事前に旅館に支払われる。だが、中小の旅行代理店の場合、GoToトラベルの35%は後日精算で遅れてしまうところもあるという。

 GoToトラベルのセールスポイントのひとつが地域限定のクーポン券。利用金額に応じて、旅行客に還元される。札幌市のある土産物店はこう話す。

「クーポン券は紙のものと、スマートフォンで使用できる、電子クーポン券があります。土産物店ではクーポン券の利用率が高いのですが、その精算をGoToトラベルの事務局がなかなかしてくれません。2~3か月かかることもある。また、紙と電子クーポンの両方が使用できる店と電子クーポンだけのところとあります。電子クーポンを持ってきた客に『なぜ使えないのか』とクレームをつけられたこともあります」

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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