林:確かにそうだと思いますよ。すごく激しく「右だ!」「左だ!」とか言って。これはSNSの影響もあると思うんですけど。

和田:外国の場合、SNSは意見をぶつけ合う場なんだけど、日本の場合、SNSが少数意見をつぶす場になっているのが問題です。コロナ対策にしても、「あんなのただの風邪だ」なんて言おうものなら袋だたきにあう。毎年インフルエンザで死ぬのが3千人から1万人。毎年10万人が肺炎で死んでるんだけど、そのうち9万5千人は高齢者なんです。それを考えたら、命を奪うという点において、インフルエンザだって同じぐらい怖いわけですよ。

林:このご時世でも、かたくなにマスクしない人もいますよね。

和田:感染者がマスクをしてなかったら、ほかの人にうつす確率は上がります。ただ、いま東京のPCR・抗原検査の陽性率は3.9%(11月3日時点)なので、一緒に食事してる人が検査で陽性、あるいはうつす可能性があるという確率は、そんなに高くない。

林:ええ。

和田:もう一つは、東京はともかく、5万人、10万人に1人の感染者しかいないレベルの地方の学校まで、運動会だの文化祭をやめさせたり、みんなにマスクをさせる必要があるのかという話になってくる。感染者がほとんど出ていない地域で「デイサービスやめます」とか「家に閉じこもってください」とかやったら、たぶん数年後に要介護率が2倍とか3倍に上がります。それと同じように、高齢者の交通事故は多いように見えて確率的にはそんなに高くはない。しかも、人をはねるという事故の確率はもっと少ないんです。ところが、高齢者が免許証を返納すると、6年後に要介護状態になる確率が2.2倍に増えるという調査結果があります。

林:なるほど。

和田:「田舎の親が高齢なので、免許証を返納させたほうがいいですか?」と聞かれたときに、「かなり少ない確率でお父さんは死亡事故を起こしますが、6年後に要介護になる確率は10%のはずが20%に増えますよ。どっちにするか選んでください」としか言いようがない。

林:皆さんどちらを選びますか。

和田:人によりますよね。かなり少ない確率であったとしても、人をはねてしまって迷惑をかけるのはイヤだと考えるかどうか。日本人は基本的に人に迷惑をかけるのがイヤな国民性だから、マスクだって人にうつして迷惑をかけたくないという心理がすごく強い。でも、「人に迷惑をかけたくない」という価値観を、ある程度崩していかないといけない。高齢になればなるほど、誰かの世話にならないといけないわけですからね。

次のページ