実にせせこましいB社の使い方もある。保育園が備品を購入する際、たとえばペン1本でもB社経由で納入することで、価格を数十円上乗せできる。給食材料費も同様だ。1食当たり100円ピンハネすれば、園児100人で年間約240万円がB社の利益。経営者の高額報酬も、役所のチェックが入らないB社から支出するケースが多い。

「保育園経営者はコンサル料などの名目で委託費をB社に回す方法を必死に考えている。私の知る限り、一定規模以上の保育園の多くが同種のことをやっている」(同)

 底が知れない保育園の「闇」。都内には約3千カ所の認可保育園があるが、今回の公開された資料の基となった東京都による監査の実施率は19年度で8.0%。発見された違反は氷山の一角だ。前述の南流山福祉会の問題を何度も足立区議会で指摘してきた市川おさと区議は、こう指摘する。

「区は園で給与遅配があったことを知りながら議会に報告せず、まるで危機感がなかった。これ以上の不正を防ぐには、委託費の使途に関して議会などの場で情報を公開していくことが必要です」

 委託費の私的流用は、犯罪行為となりかねない。大阪府東大阪市の認可保育園「みるく保育園」では、園長・副園長の夫婦(当時)によって委託費が1億円以上も私的に流用され、勤務実態のない家族に架空の給与を計上していたことが発覚。詐欺罪に問われた2人は17年に逮捕され、その後の裁判で懲役刑の実刑判決が下されている。

“強欲経営者”を放置してはいけない。(小林美希)

週刊朝日  2020年11月20日号より抜粋

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小林美希

小林美希

小林美希(こばやし・みき)/1975年茨城県生まれ。神戸大法学部卒業後、株式新聞社、毎日新聞社『エコノミスト』編集部記者を経て、2007年からフリーのジャーナリスト。13年、「『子供を産ませない社会』の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。近著に『ルポ 中年フリーター 「働けない働き盛り」の貧困』(NHK出版新書)、『ルポ 保育格差』(岩波新書)

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