プロフェッショナルな人たちと共同作業をしながら、非日常的な経験ができる今を、俳優としては幸福に感じている。

「でも、この先俳優としてどうありたいかとか、そういうことは全く考えていなくて……。昔から、一度始めたことを途中でやめるってことができない質(たち)なんです。小学校の頃に、算盤と書道を習っていて、周りは、算盤なら三級、書道なら初段になった直後に、みんなやめていって、中学まで続けたのは僕だけでした。不器用なせいで、どちらもなかなか上達しなかった割に、自分で決めて始めたことに、『もういいか』とは思えない。大して努力していたわけでもないのに、変ですよね。あ、でも大学卒業後に就職した会社には、どうしてもなじめなくて、すぐ辞めてしまいましたけど(苦笑)」

(菊地陽子 構成/長沢明)

安田顕(やすだ・けん)/1973年生まれ。森崎博之、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真と演劇ユニット「TEAM NACS」を結成。舞台、映画、ドラマなどを中心に幅広く活躍中。主演映画に、「俳優 亀岡拓次」(2016年、横浜聡子監督)、「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」(18年、李闘士男監督)、「愛しのアイリーン」(18年、吉田恵輔監督)、「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」(19年、大森立嗣監督)など。

>>【後編/安田顕「老けメイクをするとどんどん親父に似てくる(笑)」 波瑠の父親役を演じて】へ続く

週刊朝日  2020年11月20日号より抜粋