※写真はイメージです (GettyImages)
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ストレスによる心身の反応について地方公務員と教職員の比較(週刊朝日2020年11月20日号より)
ストレスによる心身の反応について地方公務員と教職員の比較(週刊朝日2020年11月20日号より)

 9月、東京23区内のある公立小学校で公開授業が行われた。コロナ禍でわが子の授業風景を見られなかった今年度。初の機会に浮き浮きと足を運んだ保護者の女性は、妙な光景に遭遇した。

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 隣のクラスで副校長が授業を行っているのだ。知人の父親にたずねると、担任の若い女性教師は2学期に入ってすぐに来なくなったという。手の空いている教員がいなかったため、副校長がチョークを片手にせっせと板書をしているのだ。

 この学校では中学年の担任の一人も、1学期半ばから学校に姿を見せなくなった。理由は明らかにされていないが、2人とも「年度内の復帰は絶望的」と説明された。

 文部科学省の調査によれば、精神疾患で休職する公立学校の教師は毎年約5千人。コロナ禍の影響についてまだデータはないが、現場では早くから“異変”が観測されていた。

 3月のある日、関東地方の公立小学校の校内では、子どもたちが不安そうな声で、教師にこう話しかけてきた。

「先生が、ずっと手を洗っているの」

 名指しされた教師の手は、真っ赤に腫れ上がっていた。それでも、蛇口から流れる冷水の下で、ゴシゴシとせっけんをこすり続ける。見かねた同僚が声をかけても、やめない。子どもたちも異変を感じていた。

「コロナ禍が広がった3月には、はた目にもわかるほど不安に襲われ、様子がおかしくなる教師が増えた。あちこちの学校で、体調を崩し休む先生も出たようです」

 そう話すのは、首都圏にある公立小学校の校長だ。持病を持つ教師もいる。感染も怖いが、児童に感染させれば大問題になり、社会的な制裁を受けかねない。そんな恐怖が、教師たちの心をむしばんでいったという。

 ほぼ全国の小中高校で休校が続いた4月以降も、教師の仕事は山ほどあった。教育委員会の「朝令暮改」の指示に混乱する現場。家庭との定期連絡のため、朝から夕方まで電話に張りつく。合間をぬって学習の準備と同時に、経験もないオンライン授業に取り組めと言われ、四苦八苦した。

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