「同盟再構築」「同盟強化」

 これが民主党陣営のキーワードであり、対中政策の鍵でもある。日韓に多額の米軍駐留経費を求め、NATO離脱をほのめかすなどしたトランプ氏を「同盟軽視」とバイデン陣営は批判し続けており、8月に出された民主党綱領でも同盟強化を謳っている。即ち、バイデン政権の対アジア戦略は、「日本を含む同盟国の力を借りながら中国に対して厳しく対応する」というものである。

 バイデン大統領は米軍駐留経費4.5倍増しといった一見して無茶な請求を日本に対して行うことはないだろう。もっとも、8月の民主党綱領に謳われているように、氏は「地域の安全保障に、より大きな責任と公平な負担を払うよう同盟国に促す」方針であり、相対的に力を落とす米国の現状も相まって、日本に対して、自国の軍事力を強化せよとの要求が増えていくことはほぼ間違いない。

 また、この一ヶ月をみても、中国牽制を目的に、日米に豪印も加わった4ヶ国外相会談が定例化され、4カ国軍事訓練が行われた。この流れもバイデン政権でも引き継がれることが予想される。

 さて、日本である。
 米国からの日本の軍事力強化の圧力がさらに高まっていくと考えられる中、現政権は、「日米同盟強化」そのものが外交方針であった安倍政権を引き継ぐとしている。敵基地攻撃能力の保有が目指され、近く防衛計画の大綱が改定予定とされるが、これらは中国を主たるターゲットとしてなされている議論である。

 もっとも、中国のすぐ隣に位置する日本の利害は、威勢良く米中対立を激化させても直ちには問題の生じない米国とは全く異なる。「米国と中国の間で踏み絵を踏まされても困る(経団連中西会長)」のが日本の現状である。

 この点、例えば、南沙諸島を抱え米中対立の主戦場ともいわれる東南アジアでは、現在、各国から「Don’t make us choose(選択させないでくれ)」との悲鳴が上がっている。9月のASEAN外相会議は、米中対立が軍事的レベルにまで高まっていることについて議論が行われたと示唆し、「ASEANは地域の平和と安定を脅かす争いにとらわれたくはない」と自制を促すメッセージを発している。

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米中の対立が続く中、日本の立ち位置は?