では、「菅別動隊」とも呼ばれる維新が大阪都構想の住民投票で敗れたことは、菅首相の求心力にも影響が出るということか。松井代表も大阪市長を任期の23年4月まで全うした後は政界を引退すると表明している。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は指摘する。

「派閥基盤のない菅さんにとっては、『菅下ろし』が出てきた時に助けになるのが松井さんだったから、これからいろんな面で影響が出ると思いますよ」

 例えば、都構想をめぐる菅首相と自民党の二階俊博幹事長の路線対立の影響について、角谷氏は指摘する。

「『都構想』が否決された翌日、二階幹事長は自民党大阪府連の幹部と会い、『初めは劣勢だったのによく頑張った。党として誇らしい』と、お祝いをしているんですね。二階さんは『都構想』に反対だったということがわかりますね」

 一方の菅首相は、その逆だったという。

「菅さんとしては、半分くらい『都構想』の実現を心待ちにしていたわけですから」

 角谷氏は続ける。

「菅さんが維新の面倒をみてやろうと思って、次期衆院選で維新との選挙区調整をしようとしても、二階さんがウンと言わなくなるかもしれません」

 この見方に対し、維新の馬場幹事長は首を振る。

「うちは国政では野党だから、大阪都構想が否決されても菅政権には影響は出ないでしょう。でも、菅さんにとって、(維新は)見えないパワーにはなっているかもわかりません。松井さんは大阪市長を辞めた後は、政界を引退などせず、次はステージを変え、国政に転身して欲しい。現在の国会では自民党を中心に、世襲議員、官僚上がりが多い。そういう人たちはほんまの地方自治はわかっていない。松井さんは府議、府知事、市長を勤め、地方自治の経験が豊富。そういう方が国政にもっと増えたほうがいいんですよ」

 東京都江東区では6日、維新の金澤ゆい氏が街頭に立ってチラシを配りながら演説していた。

「大阪都構想は否決されましたが、東京から新たな出発を切りたい。解散総選挙は来年のいつかはまだわかりませんが、早ければ1月にもあるかもしれません」(本誌・上田耕司)

※週刊朝日2020年11月20日号に加筆

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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