巨人の菅野智之(C)朝日新聞社
巨人の菅野智之(C)朝日新聞社
巨人の菅野智之(左)(C)朝日新聞社
巨人の菅野智之(左)(C)朝日新聞社
セ・リーグ連覇を決め、ペナントを掲げて場内を一周する巨人の原辰徳監督(右)と菅野智之(C)朝日新聞社
セ・リーグ連覇を決め、ペナントを掲げて場内を一周する巨人の原辰徳監督(右)と菅野智之(C)朝日新聞社

 セ・リーグ連覇を達成し、日本シリーズに照準を合わせている巨人。原辰徳監督が3度目の監督に就任した昨季は5年ぶりのリーグ制覇を飾ったが、日本シリーズはソフトバンクに4連敗を喫した。パ・リーグの球団が2013年から7年連続で日本一に輝いていることから、セ・リーグの代表として雪辱を期す思いは強いだろう。

【写真】セ・リーグ連覇を決め、ペナントを掲げて場内を一周する原監督と菅野

 一方で、オフの戦力補強も注目される。フリーエージェント(FA)戦線では、中日のエース・大野雄大の獲得に乗り出すとみられる。今季は11勝6敗、リーグトップの防御率1.82。10完投も12球団で断トツのトップだ。加入すれば、先発の軸として大きな戦力になる。

 だが、巨人には大きな懸案事項もある。絶対的エース・菅野智之の去就だ。今季は開幕から白星を重ね、日本新記録の開幕13連勝をマーク。チームへの貢献度は非常に高く、今季のリーグ最優秀選手(MVP)に選出されるのは間違いない。その菅野には、ある夢がある。メジャー挑戦だ。

 海外FA権を取得するのは早くても来オフになる。巨人はポスティングシステムでのメジャー挑戦を認めていない。ただ、菅野の場合は容認する可能性がある。昨オフ、山口俊がポスティングシステムを利用して大リーグ・ブルージェイズへ。菅野は日本ハムドラフト1位指名を拒否し、1年の浪人生活を経て巨人に入団した経緯がある。在京のテレビ局関係者は、こう分析する。

「投手で1年間のブランクというのは非常に大きい。そのリスクを背負って巨人に入団してくれて、(昨季まで)2度の最多勝、4度の最優秀防御率を獲得するなどエースとして申し分ない活躍をしている。今オフにポスティングシステムを利用してメジャー挑戦したいとなれば、球団も菅野の意思を尊重するのではないでしょうか」

 他球団も菅野の動向を注目している。

「巨人は坂本勇人丸佳浩をはじめとして勝ち方を知っている選手が多いが、それでも菅野が抜ければ大きな戦力ダウンになる。リーグ連覇は達成したが、計算できる先発投手は菅野を除くと2年目の戸郷(翔征)のみ。サンチェスは8勝(4敗)を挙げているが、突然崩れるケースも珍しくない。今季から先発に再転向した田口(麗斗)も左のエースとして期待されたが5勝(6敗)止まりで、シーズン途中で救援に配置転換されている。もし大野を獲得しても、新しい環境で1年目から今年のような活躍を求めるのは酷でしょう。他球団は十分に戦えると思う」(セ・リーグ球団のスコアラー)

 今季の大リーグは新型コロナウイルスの影響で162試合のレギュラーシーズンが60試合と大幅に削減。さらにポストシーズン終盤まで無観客だったため、多くの球団が大幅な収入減に苦しみ、各球団の財布のひもは固いと言われる。だが、菅野の登板を視察してきたメジャー球団のスカウトはこう絶賛する。

「あのレベルの投手はなかなかいない。今年のダルビッシュ有(カブス)、前田健太(ツインズ)の活躍で日本人投手のクオリティーの高さが再評価されています。菅野がポスティングシステムを利用したら、複数球団で争奪戦になるでしょう」

 日本シリーズが巨人での最後のマウンドになるのか。それとも夢を封印して、来季も巨人でプレーするか。球界のエースの決断はいかに――。
(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事