「クレジットカードや各種の契約など必要最小限にしたほうがいい。何が本当に必要なのかを見直し整理すると、生活もシンプルになります」

 各種解約の手続きは本人や親族ならそれほど難しくないが、第三者が行うのは大変だという。

「いらないものは処分する。それがおひとりさまの死後の手続きの一歩にもなると思いますね」(同)

■3カ月、4カ月以内の手続き 遺産分割協議ができない可能性も

 相続に関連する手続きが多くなる。3カ月以内には相続放棄・限定承認の期限、4カ月以内には準確定申告の期限がくる。

「コロナ禍に限ったことではありませんが、死後の手続きをスムーズに進めるためには、遺言を残しておくことは非常に重要です」

 コロナ禍では感染リスクを避けるために直接会って遺産分割協議ができなくなる可能性もある。そのため、しっかりした遺言があれば安心だと経堂司法書士事務所・代表司法書士の高橋朋宏さんは話す。

 相続放棄は、文字どおり遺産を引き継ぐことを放棄すること。相続するといってもプラスの財産ばかりではなく、負債を相続することもありうる。それを含めて放棄するか、あるいは限定承認といって、相続放棄の前にプラスの財産の範囲で債務を引き受けるという方法もあり、どうするかを決めるのが3カ月以内だ。コロナ禍でその期限を、家庭裁判所の判断によっては延長する場合もあるという。4カ月の期限がある準確定申告も延長が認められている。

 このようにコロナ禍の中で、新しい死後の手続きが広がっている。高橋さんは、こういう時代だからこそ若い人もおひとりさまも遺言を書くことを勧めている。遺言を書くことで、そのときの気持ちや自分の人生などを考えることになり、親にも遺言を書いてもらうきっかけにもなるという。とくにおひとりさまの場合は、死後に発生する左ページの表の手続きを参考にし、死後の手続きを誰に託すか考えてほしい。

「今、若い人やおひとりさまからエンディングノートの問い合わせが増えています。死後のことを心配する人が増えているのでしょうね」(明石さん)

 コロナで死後の手続きをより深く考えることで、死を考え、生を実感する。それこそ、コロナ禍の「新しい死後の手続き」なのだ。(本誌・鮎川哲也)

(本誌・鮎川哲也)

週刊朝日  2020年11月13日号より抜粋