「TOUCH TO GO」の店内の様子。手前のゲートが無人のレジ(TTG社提供)
「TOUCH TO GO」の店内の様子。手前のゲートが無人のレジ(TTG社提供)

 コロナ禍により社会の仕組みがガラリと変容しようとしている。新たな需要にも後押しされ、アフターコロナ時代はこれまで未来のものと思われていた新技術の中から、一気に普及するものが出てきそうだ。

【表】コロナ禍で拡大する「無人店舗」業績が上がるトップ20

 コロナ禍も普及を後押ししそうなのが、対人接触を減らせる無人コンビニだ。3月に開業した山手線・高輪ゲートウェイ駅内の無人AIコンビニ「TOUCH TO GO」(TTG)では店内のカメラやセンサーが来店者を追跡し、手に取った商品を認識。決済する商品がレジで自動表示される。TTG社の阿久津智紀代表が語る。

「私たちは売り上げが少なくても商売が成り立つ仕組みを作り、人手不足や地方の活性化など社会問題の解決に取り組んでいきたいと考えています。感染症対策に敏感な病院、客が少ない地方の駅売店、過疎地の小売店などから多くお声がけいただいており、実現に向けて体制を整えています」

 TTGの商品認識率は90%超で、認識できなかった商品は客がレジ前のバーコード読み取り機で認識させる。スキャン漏れや万引きが問題になりそうだが、阿久津氏は「心配していません」と言う。

「お客さまの持ち物は自動で認識していますし、そもそも有人のコンビニでも売り上げの数%はスキャンミスや万引きで欠損が生じることを踏まえると、無人を前提に防犯対策を立てたほうが、店の採算性が良くなります」

 同社は4年後に100店舗出店を目指している。ただし無人コンビニは普及に障壁があるという。

「一般的に、食品衛生法や酒税法の免許保有者が店にいることが前提の生鮮品・飲料が多く、完全無人だと営業許可が下りません。高輪店も、バックヤードには品出しや発注をする人間が1人常駐しています。過疎地域で完全無人のコンビニをやるにしても、提供できる商品に制約があります。弊社としては保守体制を強化し、デジタルとアナログを融合して省人化を実現したいと考えています」(阿久津氏)

 米国ではレジなしの無人コンビニ「Amazon Go」(AG)が急速に普及している。シンギュラリティ・ソサエティ代表理事の中島聡氏は、シアトルに住み、AGの勢いを肌で感じる一人だ。

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