入所が決まったとはいえ、お金の心配は尽きない。父の場合、1カ月(30日で計算)の基本料金は22万4760円もする。これに加え、理美容代などの実費も請求される。

 基本料金の内訳は「居住費」「食費」「施設サービス費」の三つだ。居住費と食費は基準費用額(日額)が定められ、ともに介護保険対象外。施設サービス費は施設が提供する介護サービスの代金で、所得に応じて1~3割の利用者負担となる。

 両親の場合、居住費(ユニット型個室)は1日当たり3200円(基準費用額2006円)、食費は同1800円(同1392円)で、1カ月計15万円。施設サービス費は、父の場合3割負担で1日当たり2492円(1カ月計7万4760円)となる。

 そのほか、施設ごとに請求される介護サービス代の追加料金「加算」がある。入居者全員と特定の人のみにかかるものがあり、所得に応じて1~3割の利用者負担となる。

 両親の場合、事前の説明はなく、請求書を見て初めて加算があることを知った。「口腔(こうくう)衛生管理体制加算」(父は1カ月96円)や「栄養マネジメント加算」(同1320円)がついていた。月1回以上、口腔ケアの指導が入ったり、常勤の管理栄養士がいたりするのはありがたい。

 一方、「処遇改善加算」(同6194円)と「特定処遇改善加算」(同1718円)もあった。これはどんな恩恵があるのか。淑徳大学の結城教授は言う。

「介護職員の給与の加算です。介護職員の人手不足と待遇改善のため、利用者に負担させているのです。給与の上乗せというイメージです」

 加算は「不要」の意思を示せば外せるが、全員にかかるものは外せない。介護保険市民オンブズマン機構大阪の担当者はこう説明する。

「考え方次第では、加算がついているということはそのサービスが受けられる管理体制があるということになります。たとえば機能訓練をしてほしいと思っても、施設に加算設定がなければ『うちは個別機能訓練加算をとっていないからできません』となります。同様に療養食加算がないところに、腎臓病なので減塩食にしてほしいと言っても対応が厳しい可能性もあります」

 加算にふさわしいサービスを提供しているかを見極めて、場合によっては「加算がついていますよね」と、施設側に料金に見合ったサービスの提供を促しても良いという。入所前の契約時の重要事項説明のときに、どんなものがどのような目的で加算されるのか見ておくべきだろう。

(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2020年11月6日号より抜粋