岩井:雌伏のときです。外に姿を見せたり人と接するのが難しいなら、蓄積し、何をすべきか、深く考えていただきたい。

御厨:戦争を観念と語り聞かせでしか知らない、令和の天皇が、戦没者追悼式や靖国の問題、歴史認識をどう組み立てるか。蓄積は大切です。

岩井:高輪の仙洞仮御所に移られた上皇ご夫妻のご様子にすこし触れます。人と会い、関係をつなぐのを大切になさってきた方たちなのに、静かにこもっておられる。

御厨:ええ。

岩井:6月、天皇のご相談役の参与が交代のごあいさつに伺ったときのことです。事務方の事前説明では、上皇さまは、ごあいさつの文書を読み上げられることになっていました。しかし、上皇さまは書面なしでよどみなく長いあいさつを述べてくださったそうです。

御厨:コロナ禍が収まれば、令和の両陛下の姿も見えます。上皇ご夫妻は、天皇ご夫妻が気づかない部分を、邪魔にならないよう支える心づもりであったと思います。

岩井:現在を象徴する天皇・皇后両陛下、未来を象徴する秋篠宮ご夫妻、過去を象徴する上皇ご夫妻。この3代のトロイカでおやりになればいい。

御厨:コロナ禍が収まって、上皇ご夫妻や天皇ご夫妻も皇族方もお元気な姿を、われわれに見せてほしいですね。

(構成/本誌・永井貴子)

岩井克己(いわい・かつみ)/1947年生まれ。94年から2012年まで朝日新聞編集委員。「紀宮さま、婚約内定」の特報で05年、新聞協会賞受賞。著書に『天皇家の宿題』『皇室の風』、共同監修に『徳川義寛終戦日記』など。

御厨貴(みくりや・たかし)/1951年生まれ。東大法学部卒。政治学者。東大名誉教授。東大先端科学技術研究センターフェロー。2016年に天皇の退位を検討する「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」で座長代理を務めた。

週刊朝日  2020年11月6日号より抜粋