■8行が「要注意」 低収益の第二銀

 粗利経費率に注目したのは、「地銀の収益性や経営のゆとりがどれだけあるかを把握できる」(野崎さん)ためだ。「本業から得られる収入(業務粗利益)で、事業に必要な経費をどれだけ賄えているかを示す。製造業で言う『損益分岐点』のようなもので、経営の持続可能性を評価するうえで重要です」(同)。いわば、これからも効率よく稼ぐことができるかどうかの“コスパ力(りょく)”だ。

 計算に使った「業務粗利益」は、銀行の金利収入から、預金者に払う利息を引いた資金利益をはじめ、各種手数料収入や、株式や債券の運用で得られる利益などを足し合わせたものだ。一方、「経費」は、行員らの人件費や店舗にかかる物件費、税金など。

 ちなみに、業務粗利益から経費を引いた「業務純益」は本業のもうけを意味し、一般的によく使われるが、「業務純益は銀行の規模の大小に左右されるので単純に比べられない」(同)。

 粗利経費率が100%を超えると、収入よりも経費のほうが多い状態、つまり業務純益が「赤字」であることを意味する。赤字が続けば、蓄えた資本を食いつぶし、健全性を示す自己資本比率も低下する。野崎さんによれば、粗利経費率の目安として、90%を超えれば「要注意」、80%超なら「低収益」、60~70%程度なら「標準的」、50~60%は「メガバンクや海外大手行並みに健全」などと評価できるという。

 なお、ランキングの対象が今の101行ではなく102行なのは、2020年3月期のデータを用いたためだ。10月1日に合併した親和銀(長崎県)と十八銀(同)をそれぞれ別に扱った。

 コスパの悪い上位には、冒頭に触れたみちのく銀(1位)と青森銀(9位)、今年3月に同県内の福井銀(28位)と包括提携を結んだ福邦銀(4位)など再編がささやかれる銀行が入る。

 上位8行が「要注意」の90%超で、上位40行は「収益性が低い」とされる80%を上回る。その40行のうち、過半の23行が第二地銀だ。

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