菅義偉首相 (c)朝日新聞社
菅義偉首相 (c)朝日新聞社
店舗統合を発表する十八銀行の森拓二郎頭取(右)と親和銀行の吉沢俊介頭取。両行は2020年10月に合併し「十八親和銀行」となった=19年10月29日、長崎市 (c)朝日新聞社
店舗統合を発表する十八銀行の森拓二郎頭取(右)と親和銀行の吉沢俊介頭取。両行は2020年10月に合併し「十八親和銀行」となった=19年10月29日、長崎市 (c)朝日新聞社

 地域経済を象徴する地方銀行が岐路に立っている。「(地銀の数は)多すぎる」と言及した菅義偉氏が首相になり、再編が加速するとみられるためだ。そこで本誌は、これからも効率よく稼ぐ力(コストパフォーマンス)に注目し、全国102行を独自分析。淘汰されそうな地銀をランキング化した。

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「日本全体として、もともと一つの業界に会社数が多すぎる。以前から『オーバーストア(店舗過剰)』と言われてきました。地銀はその最たるもの。ただし、ゼネコンや銀行は統合してもあまり効果が出ない。そのため今まで再編は進んできませんでした」

 株式アナリストの鈴木一之さんは振り返る。

 都市銀行が合従連衡を重ねて今の姿となったメガバンクとは違い、地銀は身近で相談しやすく、地域の頼れる存在だった。長年、地元の顧客にがっちり支えられてきただけに、再編や統合などは考えられなかった。

「地銀はあるときに突然、赤字になるようなことがなく、業績が悪くなるスピードもゆっくり。かつては保有する株式、今は債券の含み益などもあって、決算にもうまく対応し、大部分は黒字を維持しています。これまでに再編に成功したところは、かなり追い込まれたところ。誰かに背中を押してもらわないと、自分からはなかなか再編に踏み出しにくい」

 三井住友DSアセットマネジメントの生永正則さんも、こう解説する。

 ところが近年、地銀に対する“外圧”が強まっている。人口減少や少子高齢化で地域経済は衰え、有望な貸出先が減り続けている。日本銀行のマイナス金利政策で、収益の源泉だった預金と貸金の金利差である「利ざや」も縮んでしまった。

 地銀の再編は、ここ10年余りでもいくつもあった。それでもなお、全国に100行超ある。同じ都道府県内に複数の地銀があるのはざらで、域内は他の地銀だけでなく、メガバンクや信用金庫、信用組合とも競合し、顧客の奪い合いが激しくなっている。

 そこに追い打ちをかけるかのように、新型コロナウイルスの感染拡大が直撃。地域の経済活動をさらに弱め続けている。「再編は一つの選択肢」と明言する菅義偉政権が誕生したのは、そんなときだった。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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