週刊朝日2020年11月6日号より
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週刊朝日2020年11月6日号より

 夫婦はどちらかが先に死ぬことになる。遺された夫や妻、家族を困らせないために、今から夫婦で一緒にやっておくべき手続きをまとめた。夫婦が共に生きていないとできないことはこんなにあるのだ。

【生前にやっておきたい対策チェックシートはこちら】

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 都内在住の女性(73)は、今後の生活を思い、途方に暮れていた。

 1カ月前に、夫(75)がくも膜下出血で突然死した。夫は山登りが趣味で、体力には自信があった。まさか70代半ばで命を落とすことになるとは考えておらず、エンディングノートや遺言書は残していなかった。女性は急いで葬儀業者を手配したものの、夫の交友関係を把握しておらず、誰に訃報を送ればいいかすらわからなかった。

 生活費も心許ない。葬式代と墓地・墓石購入代で200万円ほど出費があるほか、今後は夫の基礎年金の支給もなくなる。

 さらに女性を悩ませたのが、相続の問題だ。夫妻には長男がいるが、夫の財産のほとんどは自宅(不動産)で、貯蓄を長男に切り分ければ今後の老後資金が足りなくなってしまう。どうすればいいのか……。女性は頭を抱えるばかりだ。

 女性のように、生前に準備をしておらず、配偶者の死後に問題を抱えてしまうケースは決して珍しくない。総務省統計局が行った平成27年国勢調査によると、配偶者と死別した“没イチ”の60歳以上男女は全国に約909万人。うち、60~69歳で妻と死別した男性は約28万人、夫と死別した妻は約103万人だが、70~79歳になると男女ともに2倍ほど増える。「いつか、そのうち」と思っていたら、結局間に合わなくなる例も少なくないのだ。

 では、「自分が死んだ後の家族の生活」について、具体的にどのような準備、手続きをしておけばいいのだろうか。

 まず夫婦で一緒に考えたいのが、配偶者の死後の生活費だ。

 とくに生活費を夫の年金に依存している場合は、要注意だ。ファイナンシャルプランナー兼社会保険労務士の井戸美枝さんは、「生前に夫が厚生年金を、妻が国民年金をもらっていた世帯の場合、夫の没後は世帯収入が半分ぐらいまで一気に下がる」と話す。

「夫の死後、夫の基礎年金はなくなり、厚生年金の75%を遺族厚生年金として妻が受け取れます(ただし諸条件あり)。支給額は、現役時の夫の年収によって変動しますが、概ね月額10万~12万円がボリュームゾーン。これに自分(妻)の国民年金を足した収入で、無理なく生活していけるのかをまずは計算してみましょう」

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