「緊急事態宣言直後の数カ月は、仕事のスケジュールも真っ白になりましたけど、世界中の誰もが直面している問題なので、私がジタバタしてもしょうがない。気が滅入って、やる気をなくすのが一番怖いから、その間にやれることをいろいろ考えました。自宅の敷地内にアパートがあって、そこの住人たちが、『通勤しなくなって体が鈍る』っていうから、週に何回か一緒に走ったり、『庭でご飯食べませんか?』と誘われて、毎週のようにプチバーベキューみたいなことをやったりして」

精神面だけでなく、肉体についても、その可能性を探るべく努力を続ける。昨年、ミュージカル「ピピン」に出演した際、アクロバットに挑戦することになり、目覚めてすぐの、30分のストレッチを習慣化させた。

「やったことのないことに挑戦して、上達することにこの上ない楽しさを感じますね。『来年までにこうなりたい』という目標を作って、努力を積んでいくと、年齢を重ねることが楽しみになるでしょう? 私は、どんなに長く生きていても、自分のことって意外とわかってないんじゃないかって思うの。最後の最後まで元気で働ければそれに越したことはないし。人生も、ここまできたらあとはおまけ、みたいなところもありますから(笑)」

その目標や楽しみを自分で決められることも大人の特権、と中尾さん。では、今現在の“来年までに達成したい目標”はなんなのだろう?

「コロナがなければ、水泳の大会に出場する予定だったんです。今年は中止になってしまったけれど、もし来年開催されるなら、バタフライで出場したいです」

中尾ミエ(なかお・みえ)/1946年生まれ。福岡県出身。62年、デビュー曲「可愛いベイビー」が大ヒット。以後8年連続で紅白歌合戦に出場した。伊東ゆかり、園まりと“3人娘”としてトリオを組み、一時代を築く。63年、歌手としては初めて映画製作者協会から新人賞を受賞。2009年から東京MXテレビ「5時に夢中!」金曜コメンテーターに。昨年、ミュージカル「ピピン」に出演、城田優との共演がきっかけで、デビュー当時所属していたワタナベエンターテインメントに復帰。

(菊地陽子 構成/長沢明)

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週刊朝日  2020年11月6日号より抜粋