もともと、あまり物事を深く考えずに、流れに身を任せるタイプ。「自分の思いも寄らない波が来たりして、そこから想像もしていないところに連れていってもらえることが楽しいじゃないですか」と朗らかに笑う。

「こんなことを言うと『あんたが能天気なだけよ』って言われちゃうかもしれないけど、私は今までの人生で、つらいとか苦しいとか、あんまり思ったことがないの。失敗は誰にでもあるし、もし失敗したら、『すみません、もう一回最初からやらせてください』って言うだけ(笑)。かっこつけようとか、自分をよく見せようと思わないから、失敗しても気楽です」

 とはいえ、“大御所”なのに気取らず飾らず、周りを寛がせる雰囲気は十分にカッコいいのだが。

「ずいぶん昔、私がまだ20歳ぐらいだった頃に、ある先輩から『お前の取り柄はなんだ?』と聞かれて、『若さです』と答えたことがあったんです。先輩には、『馬鹿野郎、そんなもの、今しかねぇ取り柄じゃねえか』と叱られましたが、私は、若い頃はそれでいいと思う。だって、そこでどんな取り柄を挙げたところで、“年の功”には勝てないでしょ? 私は、その“取り柄”の若さが目減りしていくのと引き換えに、知識や経験を積んでいきました。そして、若い頃よりも、知識や経験を積んでからのほうが人生は楽しくなったんです」

 ただ、その知識や経験も、中年期までは、“点”としか感じられなかった。

「その蓄積された点を、ある時期からつなげられるようになって、『ああ、なるほど、人生ってこういうことか』と感じた。世の中には偶然なんかなくて、全部が必然なんだなって。そういう考えに至るまでには、私の失敗を恐れない性格もいい影響を与えてくれました。人間、失敗とか、恥をかくことが一番勉強になります!」

“失敗”とは違うかもしれないが、今年の新型コロナウイルス感染症の流行の際も、ジムに行けなくなるという問題にぶつかり、苦肉の策で始めたランニングがいい気分転換になったとか。

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