「何だか時代がかなり昔に戻ったような光景ですね。昭恵さんはその行動がたたかれはしましたが、夫に付き従うのではなく対等に振る舞うという点では世界の標準に近い、新しい感覚を持っていたとも感じます。鳩山由紀夫元首相の幸夫人も、元宝塚歌劇団の女優だったこともあったのか、夫と手をつないで歩く姿を堂々と見せていましたね」

 世界経済フォーラムが昨年12月に発表した「男女格差ランキング」で、日本は153カ国のうち121位という不名誉な結果だった。背景には女性の地位や権利の向上、政治進出が遅れていることがある。「真理子さんにはそれを裏付けするような存在になってほしくはない」と多賀さんは言う。

「『言葉が出ない』『控えめ』は海外では美徳というより『何も考えていない』『冷たい人』と誤解されかねない。繰り返し頭を下げるばかりでは何も通じないし、認めてもらえません。外国語が不十分だとしても自分から積極的に話しかけるフレンドリーな人が好まれます。ただ、たとえ控えめで物静かな性格でも、相手の歴史や文化をよく理解して尊重する会話をすることができれば、リスペクトが得られるでしょう」(多賀さん)

 真理子夫人の戦いも、まだ始まったばかりだ。(本誌・上田耕司)

週刊朝日  2020年11月6日号

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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