岡田:この新聞記事は感動しました。宮尾登美子先生にしても与謝野晶子先生にしても、自分が痛かった、つらかったから書けたし、他人の痛さも自分のものとして共に感じて、共振できたから描けたと思うんです。幸田文先生だって、弟さんが結核で一緒に苦しんで看病して、だから『闘』が書けたし、『おとうと』が書けたと思うんです。

林:テレビ見てるおじさんたちがなんで先生を「カワイイ」と言って好きなのか、私、きょう先生にお目にかかってわかりました。この生真面目で純粋な感じって、特にいまテレビに出てる人なんかにはないからですよね。

岡田:でも、生真面目で純粋なのは生き方が不器用だからで、私、居酒屋にもカラオケにも行ったことがない。遊んだことがない。少し小説を書いて気持ちのバランスを取ろうかな。書きたいことは……。

林:山のようにある?

岡田:それはそう。コロナでいろんなことを見ました。なんだろうと。

林:だったらやっぱり小説を書いてガス抜きしましょうよ。楽しいこと、いっぱいありますから。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学(現・慶応義塾大学薬学部)大学院薬学研究科修士課程修了、順天堂大学大学院医学研究科博士課程中退、医学博士。厚生労働省国立感染症研究所研究員、アレクサンダー・フォン・フンボルト奨励研究員、日本経済団体連合会21世紀政策研究所シニア・アソシエイトなどを経て、現在、白鴎大学教授。専門は感染免疫学、ワクチン学。著書に『人類vs感染症』(岩波ジュニア新書)、『感染爆発にそなえる──新型インフルエンザと新型コロナ』(共著、岩波書店)など。

週刊朝日  2020年10月30日号より抜粋