草津温泉の魅力については、

「定番の観光地ですが、高齢世代にはやはり喜ばれます。中心部『湯畑』周辺はフルフラットで、観光にも便利です」

 小野小町が開湯したと伝えられる山形・小野川温泉の登府(とうふ)屋旅館もお薦めという。

「社長のお父様が晩年、車椅子生活になったことでバリアフリーに取り組むようになったお宿。社長も経験者である分、対応に手なれている。18年に新設された貸し切り風呂もきれいです」

 ほかには「首都圏なのに秘湯のような景観」として「小田急ホテルはつはな」(神奈川・箱根湯本温泉)、「経験値が高く、気軽にお客さんが相談できる」と「彩つむぎ」(栃木・塩原温泉)の名前も挙がった。はつはなは「ひのき風呂付き和洋室」「ビューバス付き和洋室」の2室がユニバーサルスタイルでバリアフリーに対応している。

■にぎわう観光地とは違う旅情

 観光地の高級旅館・ホテルとは違う旅情を味わえるのが、人里離れた山奥に湧く秘湯だ。

 どこを訪れたらいいかわからないという人は、「日本秘湯を守る会」の会員宿を利用するのがいいだろう。157軒ある。

 同会名誉会長の佐藤好億さんは、福島県天栄村で50代続く「大丸あすなろ荘」の経営者だ。高度経済成長期を経た1975年、日本全体に観光ブームが起こり、旅行会社が決めた観光地を巡るスタイルが旅の主流に。中小旅館が苦難を強いられる中、「『旅』とは何かを根底から問い直したい」との思いから、朝日旅行創業者の故・岩木一二三氏と会を発足させた。佐藤さんはこう話す。

「宿側からすれば受け入れるのは一晩でも、宿泊者にとって旅は生涯の思い出です。物理的な商品とは違い、同均質のものを再現することもできません。しっかりとした受け皿を持ちつつも、旅人の心の中に入っていく。そうしたきめ細かなもてなしができるのは、やはり家族経営の中小旅館だと思います」

 秘湯取材歴30年で、同会の宿も9割以上訪れたという温泉ライター・飯出敏夫さんに、お薦めの宿を紹介してもらった。

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