ジャーナリストの田原総一朗氏(c)朝日新聞社
ジャーナリストの田原総一朗氏(c)朝日新聞社
イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 2週間を切った米大統領選。最近の情勢について、ジャーナリストの田原総一朗氏は事情通の話を交えて説明する。

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 この原稿が店頭で読者の目に触れるときには、米大統領選挙は2週間後に迫っている。
 トランプ大統領は明らかに新型コロナ禍の対応に失敗し、米国の感染者数は15日現在787万人超、死者は21万人超と、世界一多い。しかも、ここへ来て感染者の数が異常に増大し続けている。

 その上、2日にトランプ氏自身の陽性が判明し、入院を余儀なくされた。そして、ホワイトハウスのトランプ氏に近い人間たちはマスクを着けず、そのためにクラスターが発生した。マスクを着けないトランプ氏に対する忠誠を示すために、周囲がマスクを着けなかったのだと見られている。

 この時点で、トランプ氏再選の可能性は消えた、と私は判断した。

現に、米国の複数メディアの支持率調査では、トランプ氏が入院する以前から、バイデン氏が10ポイント程度リードしていた。

 ところが、トランプ氏は何と3日で退院し、自分の体調は大変好調である、と言い切った。そして12日から接戦州であるフロリダで遊説を再開した。

「免疫がついて力がみなぎっている。今すぐ皆にキスしてもいい」

 トランプ氏は数千人の聴衆にマスクなしで愛嬌を振りまき、「自分はコロナウイルスに勝ったのだ。米国も間違いなく、コロナウイルスに勝つ」と何度も繰り返した。

 主治医によれば、ウイルス抗原検査でトランプ氏は陰性で、人に感染させる恐れはないということだ。米メディアは、早期の遊説再開には政権内部からも懸念の声が出たが、トランプ氏はそれを無視して再開を急いだと報じている。

 繰り返すが、トランプ氏はバイデン氏に約10ポイントのリードを許していた。焦らざるを得なかったのだろう。

 ただ、15日に予定されていたトランプ・バイデン両氏の2度目の討論会は中止となった。

 米国の事情通に理由を問うと、主催団体は2度目の討論会はリモートで行うことにしていて、トランプ氏は直接の対決でなければ嫌だと断ったのだという。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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なぜ、主催者側は「リモート」にしようとしたのか?