合流を要請された側の麻生派の内部事情も単純ではない。

「麻生派の幹部というのは麻生さんの個人的な魅力に惹かれ、麻生さんが大好きな人たちが集まっているんです。他派閥にはない求心力がある。好きで一緒に集まっているわけですから、麻生さんが岸田派と一緒になると言うならば皆ついていくでしょうが、そうでなかったら、バラバラになってしまう」(角谷氏)

 麻生派内には、次の総裁の有力候補である河野太郎行政改革担当相がおり、岸田派と合流した場合、岸田氏と総裁候補がかぶってしまうという問題もある。

 もう一つの火ダネもある。次期衆院選で山口3区への鞍替えを望む岸田派の林芳正参院議員が、同区を地盤とする二階派(志帥会、47人)の河村建夫元官房長官と真っ向から対立している件だ。

「二階俊博幹事長は『売られたケンカは受けて立つ』とまで豪語したが、あそこは林さんの父の中選挙区時代の地盤で、どちらにも理屈がある。混乱の中、古賀氏が『どうせ捨てられるなら』と逆襲に出て、次の総裁選の候補者に林さんをかつぐかもしれない。林さんは古賀さんの側近で、2012年の総裁選にも出たことがありますますからね」(同)

 もしそうなれば、岸田派は瓦解の危機を迎える。今後、ドラマはどう展開していくのだろうか。

「麻生さんも谷垣さんも菅政権が順調な限り岸田さんの話には乗りませんよ。支持率が50%以上ある時にヘタに弓を引いても党内で干されるだけ。そんなヘマはやらないでしょう」(前出の政界関係者)

 結局、麻生氏が巧妙な駆け引きで古賀氏を切らせただけなのでは、という見方も政界にはある。

「岸田さんはピエロだったということになってしまうんだけど、かといって何もしないでいたら、来年9月の総裁選はまた負け戦が確実。勝ち目が薄いにしても、万が一、菅政権がコケた時のことを考えて、やっぱり、麻生さんに頼るしかないわけですよ」(同)

(本誌・上田耕司)

※週刊朝日10月30日号に加筆

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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