ワシントンの大統領執務室で2018年10月、トランプ大統領(左)、ポンペオ国務長官(中央)と会合したボルトン氏=ランハム裕子撮影 (c)朝日新聞社
ワシントンの大統領執務室で2018年10月、トランプ大統領(左)、ポンペオ国務長官(中央)と会合したボルトン氏=ランハム裕子撮影 (c)朝日新聞社
ジョン・ボルトン氏(左)=2020年9月17日撮影、米大統領選で再選を目指すトランプ氏(右)。いずれもランハム裕子撮影 (c)朝日新聞社
ジョン・ボルトン氏(左)=2020年9月17日撮影、米大統領選で再選を目指すトランプ氏(右)。いずれもランハム裕子撮影 (c)朝日新聞社

 トランプ大統領のコロナウイルス感染で混迷を深める米大統領選。かつて大統領補佐官を務めていたジョン・ボルトン氏による暴露本『ジョン・ボルトン回顧録 トランプ大統領との453日』の日本語版が緊急出版された。著者に大統領選の見通しなどに日本語版の監訳者で朝日新聞論説委員の梅原季哉氏が聞いた。

【ボルトン氏とトランプ大統領の写真の続きはこちら】

[前編:ジョン・ボルトン氏「トランプ大統領は私の本が致命傷になりうると知っていた」より続く]

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──トランプ氏が中国の習近平国家主席や北朝鮮の金正恩委員長ら独裁者を賛美し、彼らとの取引に傾きがちだった描写を読むと心配になります。

 本のエピローグで触れましたが、出版前審査の帰結として、トランプや外国の指導者らの言葉については、カギカッコ付きの直接の引用ができず間接的な言い換えを余儀なくされてしまった。非常に無念でした。

 後日に、会話を直接引用した改訂版を出せればと願ってます。トランプがどれほど習近平、金正恩やプーチンと打ち解けていたのか、明確なパターンがそこにあったことが見て取れるからです。

──日本の安倍前首相は独裁国家の指導者ではありませんが、トランプ氏との関係は良好でした。

 安倍氏は非常に努力してトランプとの個人的関係を築こうとしていました。一方に中国がいるし、北朝鮮についても心配しなければならない。相当な忍耐を要したと思いますが、トランプの発言一つひとつに反応すれば時間を取られ、安倍氏にとっての目的から離れてしまいます。

 意識して、トランプが何を言おうと我慢する必要があると考えていた。実際、いらつきや反発はいっさい示さなかった。内心どう考えていたのかはわかりませんが。何度もゴルフでプレーを共にしたのも、助けになったでしょう。

──トランプ氏との関係でいえば、彼は以前からあなたの口ひげが気に入らないと言っていた。

 基本的にジョークだと思っていました。

 ただ、トランプはよく人を見ては「あいつは主演級だ」と言うことがあり、それは外観を指していました。米軍の将軍たちが常にトランプを感服させていたのは、何より彼らは体を鍛え、立派な制服に身を包み将軍らしく見えたからです。

 ですから、容姿外観はトランプにとってとても大切なことでした。女性の場合は特にそうです。

 私には、彼の父親も口ひげを蓄えていたと言いましたから、別に問題ではないと思っていました。結局は彼の気に障ったのかもしれませんが。

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