「役の年齢を見て『え、こんな年、いやだ!』とか言ってたりするし。若ければオッケーみたいなところもありますから(笑)」

 大竹さんが、いつまでも少女のようなキラキラとした輝きを失わないのは、多分その向上心と好奇心のおかげだろう。自分が成長していくのを実感できるから、舞台の稽古は特に好きだという。

「昨日より今日、今日より明日。どんどんいい芝居になって、役に厚みが出てくる。デビューが日生劇場で上演された『青春の門』という舞台だったんですが、私の出番は少なかったんです。演出は宇野重吉さんで、出番が少ないと指摘してもらえることが少ないから、『いいなあ』『いいなあ』って、お稽古中は、ずーっと人のダメ出しとかまで全部聞いていました。その後、宇野さんからダメ出しをもらいたくて、(宇野重吉さん主宰の)劇団民藝に客演したくらいです(笑)」

 初めて会った人同士が仲間になって、呼吸を合わせて芝居を作り上げていく過程も含め、大竹さんにとっては、芝居のすべてが楽しい。だから本番でも疲れを知らない。

「『疲れたー』みたいにはならなくて、必ず、『楽しかった!』で終わります。本番後に、『もう一回できる』『もう一回やりたい!』って言って、蜷川さんにはよく笑われました」

(菊地陽子、構成/長沢明)

大竹しのぶ(おおたけ・しのぶ)/ 1975年、映画「青春の門」のヒロイン役で本格デビュー。近年の舞台出演は、「ピアフ」「LIFE LIFE LIFE」「出口なし」など。NHK大河ドラマ「いだてん」に出演。2016年にはNHK紅白歌合戦に歌手として初出場。「愛の讃歌」を収めたCD「SHINOBU avec PIAF」をリリースした。21年1月には、栗山民也演出の舞台「フェードル」の再演が控えている。

週刊朝日  2020年10月23日号より抜粋