──言論の自由がある民主主義国の指導者とは思えないふるまいだと。

 専制主義的な行動なのは疑いありません。

──この夏は、ワシントン・ポストのボブ・ウッドワード氏の内幕本をめぐっても論争が起きました。トランプ氏が18年の訪仏時、米兵墓地への訪問を中止し、戦死した米兵らを「負け犬で弱虫」と表現したというエピソードが伝えられました。でも、あなたは批判の輪に加わらず、トランプ氏はそんな発言はしてなかったと言明しましたね。

 私が本で示そうとしたのは、実際に何が起きたかです。

 本の中では、トランプにとってみれば都合の良い事柄、例えばイラン核合意からの脱退は、私も支持し、実現へ努力したことですが、その過程もありのまま示そうと努めました。賛成しない人々もいるでしょう。でも、私の記述が正確なら、本全体の信頼性を支えてくれると考えています。

──一方で、トランプ氏自身が、戦場で亡くなったり傷ついたりした一線の兵士たちを低く見たり軽蔑したりしていたことは、あなたも本書の中で触れています。

 ウッドワード氏が、トランプが問題の発言をしたと書いた特定の会合に関していえば、私はその場にいましたが、そのようなトランプの発言は聞いていません。

 一方、トランプの言葉らしく聞こえるのも確かです。彼が別の機会に同様の言葉を発してないとは私は言っていない。いつだったのか混乱した人がいてもおかしくない。

 そもそも彼は誰についても悪く言う癖がある。例外は姓がトランプ、つまり彼自身の家族だけ。政権運営としてはひどいものです。何事も自分中心で、ほかはすべて意味がない、という態度の反映でもあります。

週刊朝日  2020年10月23日号より抜粋