「共働きなので、仕事が休みの日にやろうと思いながら疲れて分別ができないままため込む。その繰り返しで、夫婦ふたり分のごみを4年弱ため続けました」(由美さん)

 4年分のごみはすさまじい。自宅の1階は、コンビニやスーパーのお総菜や弁当の容器でひざまで埋まった。ネズミとゴキブリが、そこらじゅうで動きまわっていた。歩くと床がふわふわとするのは、フローリングが腐っているからだ。

 その間に、子どもも生まれたが、汚い部屋を誰にも見られたくない。

 友人が出産祝いに遊びに行くよ、と連絡をくれても断るしかなかった。

 2階のスペースでなんとか生活をしたが、風呂場も使えず赤ちゃんの湯あみは洗面所。台所の蛇口は壊れて水が漏れ続けていたが、修理の業者も呼べない。赤ちゃんによくない環境なのは、わかっている。

「子どもがハイハイで動きだす前に、なんとかしなければ」

 そう決心した由美さんは、インターネットで小山さんの清掃会社にたどり着き、電話口で声を振り絞った。

「家が散らかってしまって……。赤ちゃんがいます。掃除を、お願いします」

 見積もりにきた小山さんは、由美さんにこう声をかけた。

「私も、自分の子供が小さい時は家事に手がまわらなかったよ!」

 清掃作業は、1日で終わった。小山さんは、ごみの分別やまとめ方を由美さんに伝え、部屋にごみ箱も置いた。たまに由美さんに連絡をして、状況を確認している。

「いまは、まだきれいな状態を保てています。不思議なもので、夫も私も、床にごみや服を脱ぎ捨てなくなりました。私の場合は、ごみ出しルールに馴染めなかったことがきっかけでしたが、若い世代のごみ屋敷は多いと聞きます。私の体験が誰かの解決へのヒントになれば、と話をさせてもらいました」(由美さん)

 汚部屋やごみ屋敷での生活が、健康によいことは、決してない。

「私たち業者でも医療機関や行政でもいい。できるだけ早く、そしてどんどん頼ってください」(小山さん)

 性別に関係なく活躍できる時代だけに、頑張りすぎて何かに疲れてしまうことがあるかもしれない。そんなときも自分で抱えこまず、誰かに相談してほしい。

(本誌・永井貴子)

*週刊朝日オンライン限定記事