「まいにち、くちビル」のメニューが幅広いことには、フレイル予防という考え方も影響している。フレイルとは少し体の弱った虚弱状態のことで、要介護とピンピン健康な状態を両極端とした場合、その中間の状態を指す。

「フレイルの段階なら適切にケアし、毎日トレーニングをすることで、再びピンピン健康な状態に戻ることも可能です」(清水氏)。だから健康な状態やフレイルの状態のときから、日々トレーニングを重ねることが大切なのだ。

「フレイルには食べる力に相当するオーラルのほか、全身運動で予防するフィジカル、社会的つながりに関するソーシャルの3要素があり、それらをバランスよく予防することが良いとされています」(医療関係者)

 そんなわけで、「まいにち、くちビル」のメニューは多彩になっている。また今のお年寄りにとって感染対策のため重要な、コロナウイルス予防の要素も加えられている。

 自宅にいながら、一人でも取り組める「まいにち、くちビル」だが、前身の「くちビルディング選手権」は、大人数が参加するリアルなイベントだった。

 地域の体育館などにお年寄り(老若男女の場合も)が集まり、噛む力、のみ込む力、呼吸する力などを、楽しみながら向上させる競技に挑むスポーツプログラムになっていた。

 清水氏がグッドネイバーズカンパニーで、みんなで楽しめるようなプログラムを創り出そうと考えたきっかけは、従来の摂食、嚥下機能トレーニングに疑問を感じたことだった。

「例えば、パタカラ体操というものがあります」(清水氏)

 両機能を回復させるため、「パ・パ・パ・パ……」といった調子で、パ・タ・カ・ラをそれぞれ30回口に出して言うという体操だ。施設によっては、温かい食事を目の前にしながら、お年寄りにパタカラ体操をさせているところもあったという。

「確かに機能回復には効果があるのですが、これでは予防のために楽しく取り組むものにはならないでしょう」と、清水氏。それゆえ同法人のプログラムは、笑い声やおしゃべりが絶えないものになっている。機能向上のため競技をすることも大事だが、楽しく続けるには、それを通じてみんなで笑ったりおしゃべりしたりすることも大切なのだ。クスッと笑顔になるような楽しさは、日めくりになった「まいにち、くちビル」にも受け継がれている。

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