「脳の機能障害を起こしてうつ病を発症するまでには、少し時間がかかります。実際、新型コロナが関係してうつ病になったと思われる患者さんが受診するようになったのは、緊急事態宣言の2カ月後、6月に入ってからです」

 これは自殺者数を見ても明らかだ。月別の自殺者数は今年7月に急に増え1818人に。8月は1854人となった。

 心の悩みに対する無料SNS相談を実施する、NPO法人東京メンタルヘルス・スクエアの常務理事、新行内勝善さんは、「8月以降、『死にたい』という相談が明らかに増え、カウンセラーの間でも話題になっていた」という。

「特に、竹内結子さんの自殺報道があった日は、これまで多くて1日300件程度だった相談アクセスが、当日は1400件、翌日は1800件ありました。この2日間は特別だとしても、相談件数は減っていく感じはしません。状況は深刻です」

 竹内さんの自殺では、その背景に「産後うつ」があったのではといわれている。

「産後うつとは、子どもを産んだ女性の10人に1人がかかる、うつ病の一つです。誰でもかかる可能性があり、過去には、母親だけでなく、そのパートナーがかかったケースもあります」

 そう話すのは、産後うつに詳しい産婦人科医で広尾レディース(東京都渋谷区)院長の宗田聡医師。国立成育医療研究センターの調査では、妊娠中から産後1年未満の女性の死因の1位は自殺であり、2年間で約100人が命を落としている。

「子どもを残して命を絶つなんて考えられない」と思う人も多いだろう。だが、これもうつ病がもたらしたものだと宗田医師は言う。

「“子どもを産んだお母さんはみんなハッピー”というのは幻想。そのような考え方が、産後うつで悩んでいる患者さんを追い詰めています」

 川村医師は、うつ病になりやすい人の性格には二つあるという。一つは、まじめで責任感が強く、完璧主義者なタイプ。もう一つは、人前では社交的で明るいが、一人になると孤独感に襲われるというタイプ。後者は特に人に心を開いて苦しい胸の内を打ちあけることができない。一人で抱え込み、どんどん自身を追い詰めていく。

「いずれにしても、周りが気づいてあげることが大事です」

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