亡くなった竹内結子さん (c)朝日新聞社
亡くなった竹内結子さん (c)朝日新聞社
月別の自殺者数 (週刊朝日2020年10月16日号より)
月別の自殺者数 (週刊朝日2020年10月16日号より)
TALKの原則 (週刊朝日2020年10月16日号より)
TALKの原則 (週刊朝日2020年10月16日号より)

 誰だって「死」は怖い。よほど勇気がないと自ら命を絶つなんてことはできない。ではなぜ、自ら死を選ぶ人がいるのか。

【グラフで見る】月別の自殺者数が急に増えた時期は…

「そこには共通する病気があります。それが『うつ病』です」

 こう話すのは、日本自殺予防学会理事長で帝京大学医学部教授の張賢徳医師だ。WHO(世界保健機関)によると、自殺した人の97%には、うつ病や躁うつ病などの気分障害や、アルコール・薬物依存、統合失調症、パーソナリティー障害など、精神医学で診断がつく病気があった。

「これは、遺族への聞き取り調査の結果からわかったことです。医療機関にかかっていた人はもちろんですが、かかっていなかった人も、同じようにうつ病などの精神医学的な病気がありました」

 うつ病は、日本人の100人に3~7人が経験している病気で、患者数は約130万人。精神的、肉体的なストレスが長時間続くことで、発症する。うつ病に詳しい川村総合診療院(東京都港区)院長の川村則行医師は、「うつ病は脳の機能障害」と説明する。

「最近の研究で、うつ病は感情を調整するセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスの乱れで起こることが明らかになっています」

 この結果、強いネガティブな感情に支配されたり、他のことが一切見えなくなる“心の視野狭窄”が生じたり、自責感にかられたりするようになる。その先にあるのが、自ら命を絶ちたいという強い欲求だ。

「大事なのは、これは本人の意思とは別に起こる衝動だということ。実際、うつ病の患者さんに『なぜ死にたくなるのか』と聞くと、『わからない。それくらいつらいとしか答えられない』と言う人がいます」(張医師)

 川村医師も言う。

「死にたいのではなく、この苦痛から逃れたい、楽になりたいのです。一度そういう考えに支配されると、大切な家族のことや、仕事のことなどはどうでもよくなってしまう。それくらい死への欲求が強まるのです」

 コロナ禍で国民の多くが不安を抱いている今、「単なる不安ではなく、うつ病のレベルに達している人は、相当数いるのではないか」と張医師。その人たちの自殺リスクに警戒感を持つ。

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