「教員のわいせつ行為が相次いでいる。免許を再交付しないで」と訴える保護者ら=9月28日(C)朝日新聞社
「教員のわいせつ行為が相次いでいる。免許を再交付しないで」と訴える保護者ら=9月28日(C)朝日新聞社

 児童へのわいせつ行為で懲戒免職を受けた教師に復帰の道を残すべきか。

 子どもを性暴力からも守るために活動する全国学校ハラスメント被害者連絡会が9月28日、「わいせつ教員に教員免許を再交付しないで」とする5万4千筆超の署名を文部科学省に提出した。

 現行の教員免許法ではわいせつで懲戒免職となっても、3年後には教員免許を再取得できる。同会の共同代表を務める郡司真子さんはこう言う。

「免許再交付までの制限期間を5年へ延長することを検討との報道も一部ありましたが、延長したところで意味はありません。再交付しないでという声に対し、文科省は『職業選択の自由』を盾にしています。加害者側の社会復帰も大事かもしれませんが、トラウマを植え付けられる被害者の感情はどうなるのか。被害者の基本的人権がないがしろにされていると憤りを覚えています」

 同じく共同代表の大竹宏美さんはこう話す。

「児童に対するわいせつはアルコールなどの依存症に似ているのかなと思っているので、対象が近くにあれば、それが引き金となります。アルコールなどと違うのは、被害を受ける相手がいるということ。わいせつ教員を子どもに近づけてはならないんです」

 この問題について、数々の裁判を傍聴してきた教育評論家の武田さち子さんはこう指摘する。

「裁判で『教師からわいせつ行為を受けた』と認定されること自体、ものすごく大変なんです。証拠集めも難しく、教師が否定すれば終わってしまうことも多々あります。その中で懲戒免職処分を受けるというのはよほどのこと。その教師を再雇用するというのは子どもにとって非常にリスクが大きい」

 武田さんは多くの教員たちに話を聞く過程で、“トンデモ教師”の存在を知ったという。

「子どもを性的な対象とし、そのために教員になった人は実際にいる、という話はあちこちで聞きます。あまりにも多く聞かれるので、場合によっては一つの学校に一人二人はそうした教師が必ずいるのではないかという印象を抱きます」

 同会は再交付制度の“廃止”に加え、養成課程から人権を学び、採用時には適性検査、その後も定期的に研修を受けることを望んでいる。

 萩生田光一文科相は9月29日の会見で、「私個人は、わいせつ教員は教壇には戻さないという方向を目指して法改正をしていきたい」と語り、文科省の担当者は「法制上可能な、最大限のところを検討している」と話した。

 郡司さんは言う。

「署名提出はあくまで第一歩を踏み出しただけ。きちんと法改正がなされるまで注視していきたい」(本誌・秦正理)

※週刊朝日オンライン限定記事

著者プロフィールを見る
秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

秦正理の記事一覧はこちら