林:私なんか年とってくると保守的になって、「変わるのはイヤだ」みたいになってきますけどね。ところで、日常は、まず朝日新聞の4コマ漫画を描くんですか。

しりあがり:あれは3日に一ぺんくらい3本まとめて渡すみたいな感じなんです。描く日は朝からずっと考えて、夜に描き上げて渡すみたいな。その後、飲みに行ったり……。あとは何をやってるんだろうなあ。なんかむなしく時間が過ぎてるな(笑)。

林:アイデアが出ないときって、つらくないですか。

しりあがり:そうなんですよね。時間があればいいんですけど、ないと「このくらいでいいかな」って出しちゃうことも多くてね。そういうときはちょっと気持ちがよくないですよね。

林:『サザエさんうちあけ話』で長谷川町子さんがアイデアが出ないときのシーンを読むと、苦しくて苦しくて、胃がキリキリ痛んで、あれで長谷川町子さんは病気になっちゃったかもしれないと思いました。当時はパソコンはおろかファクスもないから、オートバイで原稿を取りに来るんですよね。描いても気に入らなくて、オートバイに待っててもらって描き直して、「よし」と思って前の原稿をビリッと破いたら、それが描き直したほうの原稿だったとか(笑)。

しりあがり:わー。長谷川さんは志が高かったんじゃないですかね。

林:私なんか、新聞で恋愛小説を書いてて煮詰まったときは、自然の描写を書いたり、食べたり飲んだりの食事のシーンを書いてごまかしたりします(笑)。でも、漫画は一日一日が勝負だから大変ですね。

しりあがり:それはいいなあ。僕もちょっとごまかそうかなあ(笑)。

林:学校の先生もしてらっしゃるんですよね。私の母校の日大芸術学部でも。

しりあがり:もう20年ぐらいやってます。林さんは日芸の……。

林:文芸学科です。

しりあがり:あっ、そこに行ってます。

林:ほんとですか。文芸学科で何を教えてらっしゃるんですか。

しりあがり:非常勤で年に5回くらいしか行かないんですが、自分がやってきたこととか、あとは漫画の基本みたいなことですね。

次のページ