しりあがり寿さん(左)と林真理子さん (撮影/写真部・掛祥葉子)
しりあがり寿さん(左)と林真理子さん (撮影/写真部・掛祥葉子)
しりあがり寿 (撮影/写真部・掛祥葉子)
しりあがり寿 (撮影/写真部・掛祥葉子)

 ギャグだけでなく、新聞の風刺4コマや長編漫画など様々なジャンルに携わる一方、映像や現代アートなど多方面に活躍の幅を広げるしりあがり寿さん。パロディーや近年取り組む北斎作品への思い、コロナ禍で思うことなど、作家の林真理子さんがうかがいました。

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[前編:4コマ漫画を18年連載 しりあがり寿「時事ネタを扱う難しさ」語る]より続く

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林:最近、国立新美術館で古典と現代アートのコラボレーション(「古典×現代2020‐時空を超える日本のアート」)もなさったんですね。葛飾北斎の「冨嶽三十六景」を、しりあがりさん流のパロディーで描いて話題になりましたけど、最近はああいうアーティストとしてのお仕事も多いんですか。

しりあがり:ここ15年くらい、漫画以外でもオモシロイことをやろうとしてるんですが、どうしても美術の範疇(はんちゅう)になっちゃうんです。

林:北斎の有名な富士山の絵、あの赤富士の山肌を巨大な髭剃りでスーッと剃っていったり、とってもおもしろかったです。ああいうアイデアはいくらでも湧いてくるんですか。

しりあがり:ああいうのを考えるのは好きです。描くより考えるほうが好きですね。

林:私の若いころは、糸井重里さんとか亡くなった秋山道男さん(編集者)とか「ビックリハウス」全盛のころで、既存の文化を笑いのめしたり、否定したりすることがもてはやされましたけど、今、既存の文化がこんなに元気がないと、パロディーをやろうとすると古典にまで行かなきゃいけないんですかね。

しりあがり:パロディーの対象になるものって、権威とか、みんなが知ってるものとか、あと、パロディーにされても「なんだ、いたずら小僧め」みたいな余裕がないといけない。今、その余裕がないのかもしれないですね。でも、この北斎がきっかけかどうか、最近パロディーの仕事が多いんです。「ドラえもん」とか「マグマ大使」とか、今年の夏はユニクロでミッキーマウスのTシャツをつくらせてもらいました。ミッキーマンガアートというシリーズで。

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