林:朝日は安倍(晋三)さんが大嫌いだったみたいですけど、そこにずっと長く描いてらっしゃると、タッチが朝日寄りにシフトしちゃうということもあるんですか。

しりあがり:おかげさまでというか、僕は朝日でもどこでも、自分の思うことを描いて「これは良くない」と言われることは少ないですね。

林:朝日は検閲もないしクレームもつけないということですね。ここは強調しておかなきゃ(笑)。

しりあがり:それはたまたま僕と考えが近いからかもしれないんだけど、ちゃんと野党もくさすというか、野党って、いるんだかいないんだかわかんないじゃないですか。批判のしようもないんで、どうしようと思うんだけど、その意味ではわりと自由に描かせてくれますね。

林:もう18年ですか。

しりあがり:そのくらいになりますね。よく続けさせてくれたなと思って感謝です。

林:紫綬褒章を受章なさったのはいつですか。

しりあがり:14年ですね。

林:そんなに早くですか。私なんてついこのあいだだったけど、やっぱり朝日新聞という権威があるからかな(笑)。

しりあがり:それはあるかもしれないですね。あと、震災の漫画を描いたタイミングもあるのかな。だって僕、漫画はぜんぜん売れてないし、すごい作品を描いたわけでもないし。

林:いやいや、やっぱり新聞で長く4コマ漫画を描くって、大きな権威であり業績ですよね。私たち作家も新聞に連載小説を書きますけど、だいたい1年で交代します。だけど漫画の方は10~20年とやるわけですから、それだけ継続しているということ自体、勲章をもらえるぐらいのことだと思いますよ。

しりあがり:いやいや、それこそ「少年ジャンプ」とか「ビッグコミック」とかに比べると、競争がないじゃないですか、新聞は。

林:ありますよ。選ばれること自体がすごいと思いますよ。

しりあがり:そこまではね。それもタイミングとか、締め切りを守る人かどうかとか、そういうのがあるだろうし、「ジャンプ」とか「ビッグコミック」とかでやってる競争とは別の世界ですからね。

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