最近は、ゴルフを週に2回、残る5日は朝からヨーガ。ゴルフで高スコアを出すために、筋肉トレーニングにも余念がない。マグマヨーガに行かない日は、ジムで筋トレに勤しんでいるそう。

「この5~6カ月は、仕事は入ってないけど、スケジュールは詰まっていました。次男がピアノを習っているので、その送り迎えだけじゃなく、家で指導できるように、レッスンをちゃんと監視するんです(笑)」

 ジムもヨーガも行けなかった自粛期間中は、さすがの市村さんも2カ月で2キロ太ったとか。

「YouTubeでいろんな踊りをやっていて、それを観ながら子供たちと一緒に体を動かしてみたけれど、つまんないね。スタジオで、人と一緒に励ましあいながらやるのが僕は性に合ってるみたい。だから、緊急事態宣言が解除になった翌日にはすぐスタジオに行きました」

 2人の息子は、市村さんの舞台には必ず足を運ぶ。そして、舞台を観た翌日には、作品の役のセリフを記憶し、2人でごっこ遊びをするらしい。

「2年前の『生きる』を観たあとも、僕は家にあった子供用の鉄棒にブランコを吊るす羽目に(笑)。そしたら、そのブランコを漕ぎながら、息子たちが、『♪い~のち~短し恋せよ乙女』って、渡辺勘治の歌う『ゴンドラの唄』をまねるんです。この間も、お墓参りに行った時、近くにブランコがあって、『パパ、もうすぐだね』って言って、ブランコを漕ぎながら、『♪い~のち~』って歌って」

「生きる」がこのコロナ禍で上演される意義について語った時、終始陽気だった市村さんの声のトーンが少しだけ低くなった。

「人間誰しも、幸せな時期があれば、不幸な時期もある。不幸な時期があるから、幸せが倍増する。今はコロナ禍で、人に触れられないし、唾も飛ばせない。大切な人を抱きしめることもままならないけれど、これが解けたら、今までにないくらいの幸福を感じられるかもしれないですよね。このミュージカルでも、渡辺勘治はがんになって、『まだまだこれから!』と自分を奮い立たせます。苦しい中でも、『できることはまだまだある』という気持ちになってもらえたら」

(菊地陽子 構成/長沢明)

週刊朝日  2020年10月9日号より抜粋