そこで強くお勧めしたいのが、「Yes」もしくは「No」の後に「but~」を添えた表現。全肯定もしくは全否定ではなく、条件や代替案を示すという言い方だ。

 ドラマでも、半沢がこの表現を使って反転攻勢へのきっかけとした。紀本常務の捨て身の説得によって、役員会で帝国航空の債権放棄案が認められる場面。半沢はすかさずこう発した。

<メインバンクの開発投資銀行が債権放棄に反対した場合は、当行もそれに準ずる、その条件を付していただけませんか>

 このとき半沢は債権放棄の決定自体には逆らえず、つまりは「Yes」。だが「but」として債権放棄“拒絶”につなげる条件を中野渡頭取に受け入れさせたのだ。

 次のような事例があったとしよう。「来週の金曜日までの期限付きで5点の依頼」を受けた場合、全肯定もしくは全否定で応じようとしないことが大事だ。「来週の金曜日まではちょっと厳しいけど、再来週の水曜までなら、何とかできそうです」「5点は無理だけど、3点なら何とかなります」

 こんな感じならハードルがぐっと下がる。断るにしろ、引き受けるにしろ、他の選択肢を知っていれば、いざというときに実行できる。安請け合いした結果、自己嫌悪に陥るという、お決まりのパターンからも解放されていくにちがいない。

 コロナ禍で思うようにいかない面も多い生活だが、少しでも意識や行動が前向きになれば、必ずやストレスを上手に乗り切ることができ、自己肯定感も高まるはずだ。

 余談だが、9月3日に国連児童基金(ユニセフ)が公表した「先進国・新興国38カ国に住む子どもの幸福度調査の結果」は、衝撃的なものだった。日本の子どもは、「身体的健康」は1位だったものの、「精神的幸福度」は37位と、調査対象国の中でワースト2位となった。

 前述のとおり、レジリエンスを高めれば、自己肯定感を高めることにつながる。若いころからレジリエンスを意識し、それを身につけることで、必ずや長い人生を2倍どころか1000倍をも楽しめるはずだ。(人材育成コンサルタント・内田和俊)

週刊朝日  2020年10月9日号