「半沢直樹」役の堺雅人 (c)朝日新聞社
「半沢直樹」役の堺雅人 (c)朝日新聞社

 目の前の逆境やトラブルを乗り越える力「レジリエンス」が改めて注目されている。人気ドラマ「半沢直樹」(TBS系)の主人公はまさに、こうした強い精神力を持つ究極の人物として描かれていた。新型コロナウイルスへの対応などストレスが絶えない社会で、いかに感情や行動を前向きにコントロールしていくか。レジリエンスに関して多くの著書がある人材育成コンサルタントの内田和俊氏が、その心得を教えてくれた。

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 レジリエンスとは、ストレスによってゆがんでしまった心を「元の正常な状態に戻す力」で、「心の自然治癒力」とも表現できる。ビジネスパーソンの間で“ストレス耐性”を高めるスキルとして認知されてきたものだ。ただ、ストレス耐性を高めるだけではない。あらゆる世代において、自らの価値や存在意義を認める「自己肯定感」を高めるのにも有効だ。

 半沢直樹は揺るぎない自己肯定感に裏打ちされているからこそ、大和田取締役をはじめ、中野渡頭取や白井大臣、箕部幹事長に対してもひるむことなく、毅然(きぜん)とした態度で対等に渡り合い、啖呵(たんか)を切ってみせた。半沢とまではいかなくても、レジリエンスを高めるにはどうするか。

 一つ目のポイントは、考え方や視点を「短期」から「中長期」へ変えることだ。

 あらゆる場面で「効率化」の名のもと、短期での結果を求められがちだ。だが、レジリエンスを高める観点では、短期で物事を判断することは望ましいとは言えない。例えば、短期の視点だと「失敗」と判断されてしまう出来事も、中長期の視点に立つと「大成功」や「大発見」のきっかけであったということは、多くの成功秘話が教えてくれている。

 視点を中長期へ変えれば、穏やかな感情を取り戻すことができ、「もう少しがんばろう」という気持ちにもつながる。

 ドラマでは、帝国航空の再建をめぐる攻防があった。政府肝いりのタスクフォースによる「短期視点」の安易な債権放棄案に対して、半沢は「中長期視点」に立った自力再建案を主張し、帝国航空の経営陣だけでなく、社員までも鼓舞した。

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