日本は、個の意識がまだまだ薄く、オカミの管理が好きだ。年齢でくくっておけば暴走しないとでも思われているのか。実態が崩れてしまっている今、やめるべきだと思う。人それぞれ、若く活躍している人と、早く老けこむ人、それは年齢ではない。この機会にマスコミから年齢を書くことをやめてみないか。

 知り合いの記者に、記事にはなぜ年齢が必要かと聞いたら、「読者サービスです」という答えが返ってきた。年齢がわかったからといって別にそれがどうしたと思ってしまう。私という人間が毎日それなりに積み重ねて生きて来た結果であって、これからも積み重ねていくだけのこと。

『年齢は捨てなさい』(幻冬舎新書)という本を出したこともあるが、「敬老の日」などと一くくりにして敬ってなど欲しくない。しかし気をつけよう。認知症の検査ではまず生年月日を聞くというから。

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『極上の孤独』『年齢は捨てなさい』ほか多数

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下重暁子

下重暁子

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

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