中日の大野雄大(C)朝日新聞社
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中日の大野雄大(C)朝日新聞社
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 中日大野雄大の投球にすごみが増している。今季は開幕から登板5試合は白星がなかったが、7月31日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)で初勝利を挙げてから5試合連続完投勝利。巨人のエース・菅野智之と投げ合った9月8日の巨人戦(ナゴヤドーム)も黒星を喫しながら2失点完投と最後まで投げ切った。22日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)も被安打2の完封勝利と危なげない投球で6勝目をマークした。

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 菅野のリーグトップの11勝には離されているが、菅野が3完投に対して大野は7完投。ある球界OBは、こう評価する。

「このままいけば沢村賞は菅野が確実だが、救援投手を使う分業制の現代野球で試合の最後まで投げ切る大野の投球内容には大きな価値がある。防御率、白星も大事だが、9回を逆算して投げ抜く力や安定感という面では大野のほうが菅野より上だと思う」

 その大野は7月31日に国内フリーエージェント(FA)権を取得。ヤクルト・山田哲人と共にオフの動向が注目される。スポーツ紙記者は、こう分析する。

「京都出身の大野は学生時代に阪神ファンでした。阪神は当然獲得にいくでしょう。ただ、相思相愛だから移籍確定とも言い切れない。巨人も先発投手が補強ポイントです。菅野がメジャー移籍を視野に入れていることもあり、完投能力が高い選手はのどから手が出るほど欲しい。年俸も現在の1億3千万円から倍額以上を提示するでしょう。優勝に一番近い球団でプレーできることは大きな魅力です。パ・リーグの球団も獲得に乗り出す可能性はありますが、巨人、阪神の一騎打ちになる可能性が高いのではないでしょうか」

 一方で、大野はプロ10年目を迎えた中日に特別な思いがある。佛教大のエース左腕として活躍し、日本ハム・斎藤佑樹(早稲田大出)、元西武・大石達也(早稲田大出)、ロッテ・沢村拓一(中央大出)と共に「大学ビッグ4」と評されていたが、4年時に左肩を痛めてからは登板がなく、各球団はリスクを考慮して2010年秋のドラフトで指名を見送った。その中で、中日は大野の潜在能力を評価して単独で1位指名した。

 大野は入団会見で、

「僕は、大学生活最後のシーズンは肩のケガのため、まったく放れずにシーズンを終えてしまった。それでも僕のことをスカウトの皆さんは認めてくださって、僕を指名して頂きました。その感謝の気持ちはこの先ずっと忘れることなくプレーしていきたいと思いますし、早く期待に応えるというよりも、自分自身がはい上がってプレーできる選手になっていきたいと思います」

 と決意を口にしていた。

 13年から3年連続2桁勝利を挙げるなどエースへの階段を順調に駆け上がったが、18年は未勝利と屈辱を味わった。酸いも甘いも経験した左腕は今が円熟期と言える。来年身にまとうユニホームはドラゴンズブルーか、それとも――。=記録は9月25日現在(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事