「定年を迎えると年金も退職金もあるので、守りに入ってしまう方が多い。でも、そうした方は私から見ると老けるのが早い。いろいろな立場の人と接することができる日々はおもしろいし、充実感があります」

『定年後も働きたい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などの著作を持つ松本すみ子さんは、起業のハードルは一般的なイメージに反して決して高くないと指摘する。

「一般的に『働く』は『雇われる』と同義で捉えられがちですが、『起業』も立派な選択肢。資本金1円からでも会社は設立できます。まずは緩やかにでも始めてみるのがいいでしょう。一見趣味のように見えることでも、すべて仕事と結びつく可能性があります」

 起業にあたっては、シニア向けの融資や補助金・助成金を利用することもできる。日本政策金融公庫の「シニア起業家支援資金」は55歳以上が対象で、融資限度額は7200万円。返済期間は設備資金が20年、運転資金が7年ほど。中小企業庁のポータルサイト「ミラサポplus」では、企業経営や創業に役立つ国・都道府県の補助金・助成金情報がまとめて検索できる。そのほか、インターネット上で資金を募るクラウドファンディングという方法もある。

 松本さんは、こう語る。

「起業して一定の利益が得られるようになるまで、最低でも3年近くはかかると思っておいたほうがいいでしょう。根気良く取り組む覚悟は必要。目指している地点や、どうなったら辞めるのか、先に考えておくことも大切です」

(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2020年10月2日号より抜粋