実はジム氏の連載は、『ジム・ロジャーズ お金の新常識』(朝日新聞出版)としてこのほど書籍化された。本の中でジム氏は、この「日銀のまね」をしたETF買いを紹介したすぐ後で、投資では「政府のお金がどこへ行くかを考える」ことが大事だと述べている。政府が事業をする場合、事業に投じる政府のお金がどの会社に入るのかを予測し、お金が入りそうな会社に投資して「儲けの一部を手に入れる」というのだ。

 政府=日銀ではないものの、ETF買いも当局の動きに追随するジム氏の投資姿勢の一環のように見える。

 ETFで日本全体に投資し、投資先は当局の姿勢から学ぶ──こうしたジム氏のマネーに対する姿勢は、個人投資家の参考になるのだろうか。

 先の井出上席研究員は、日本株ETF自体は少額から始められるため、投資の「練習」になるのではとする。

「投資未経験の人が手始めに株式市場に投資するには日本株ETFは『あり』じゃないですか。十分に投資先が分散されているから、個別株のように倒産で価値がゼロになったりすることはありません。さらに一度に買うのではなく何回かに分けて買えば、時間も分散できます。それで慣れてくれば、投資額を増やしたり海外へ資産を分散させたりしていけばいい」

 ただし、練習台にはなっても、本格的な長期投資や資産形成に向いている商品ではないようだ。資産運用に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦氏が、

「資産形成層にとっては『長期・分散・積み立て』が基本ですが、ETFは積み立てができる商品がほとんどありません。分配金が出る商品はありますが、それが自動的に再投資される仕組みがないので複利効果も望めません。長期の資産形成をしたい人にはあまり関係がないといっていいでしょう」

 と言えば、マネー相談専業のFPである高橋忠寛氏も、

「株が好きな方以外でETFをご存じの方はほとんどいらっしゃいませんね。市場全体に投資するインデックス投資自体は私もすすめていますが、普通の投資信託の手数料が近年安くなり、ETFとほとんど変わらなくなっています。そうなると、なじみのある投資信託で十分で、ETFの優位性が低くなります」

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