井上康生・柔道家、柔道全日本男子監督 (撮影/写真部・小黒冴夏)
井上康生・柔道家、柔道全日本男子監督 (撮影/写真部・小黒冴夏)
井上康生さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・小黒冴夏)
井上康生さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・小黒冴夏)

 リオ・オリンピックで52年ぶりの全階級メダル獲得という偉業を成し遂げ、日本柔道を再建した、全日本男子監督の井上康生さん。柔道が国際化されてきた中で、日本が目指すものとは……。作家・林真理子さんとの対談で柔道界の発展を語りました。

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林:最近、『柔の道 斉藤仁さんのこと』(講談社)という本が出ましたけど、元代表監督の斉藤仁さんが亡くなられて何年ですか。

井上:亡くなったのは2015年ですから、もう5年ですね。斉藤先生とは現役時代からいろいろとかかわりを持たせてもらって、いろんな思い出があります。

林:この本、山下泰裕さん(JOC会長)が編者ですけど、亡くなって5年たってこの本を編まれたというのは、斉藤さんの教えとか生き方とかをオリンピックのこの年に伝えたいということですか。

井上:そうだと思います。斉藤先生が残された哲学とか練習方法とかをわれわれが継承していくことが、今後の日本の柔道界の発展によりいっそう必要なのではないかということだと思いますね。

林:私、バルセロナ・オリンピックのときに、スポーツ紙の特派員として現地に行ってたんですけど、柔道会場で斉藤さんとちょっと言葉を交わしたことがあるんです。そのとき斉藤さんが、ある女子選手のことを「彼女はあの小さい体ですごく頑張りました」と言って、すごく熱を込めて話してくださったんです。

井上:そうだったんですか。バルセロナ・オリンピックというと、1992年ですね。そのころ、私は中学生でした。

林:あ、そうか。監督、まだお若いから、あのときは宮崎の中学生だったんですね(笑)。

井上:あのとき男子は、古賀(稔彦)、吉田(秀彦)という講道学舎の兄弟分みたいな二人が優勝して、非常に大きな話題になりましたし、古賀さんは膝をケガされた中での優勝だったので、相当ドラマチックな勝ち方だったことは鮮明に覚えてますね。

林:さすがですね。ずっと前のオリンピックのことも全部頭に入ってるんですね。

井上:男子は覚えてますね。さかのぼって全部言えると思います。

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