築地本願寺が7月から本格的に始めたオンライン法事
築地本願寺が7月から本格的に始めたオンライン法事

「コロナでも変わらずにご縁をつなぎ続けたい」

 築地本願寺和田堀廟所(東京都杉並区)で主管を務める平井裕善さんは、こう話す。同院は7月から、門徒が在宅のまま墓参りできる取り組みを始めた。電話で申し込み、自分や埋葬されている故人の名前、墓参りを希望する日にちなどを伝えておくと、その日に同院の僧侶が墓前でお経を読み、墓の簡単な掃除や供花などの手入れをしてくれる。

「福祉施設や離れた場所に住んでいたり、病気だったりして墓参りができないという相談は以前からありましたが、コロナで外出を制限される人が増え『何とかできないか』という声が寄せられたことを機に、本格的な取り組みを始めました。実際に墓へ足を運んでくれる人と変わらずに、故人や仏様への気持ちを届けられるようにしたい」(平井さん)

 お布施は、通常の墓参りの読経と同じようにもらう。希望に応じてオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」で墓参りの模様を中継したり、法話をしたためた手紙や写真を送ったりする。葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子さんは、こう解説する。

「墓参り代行は以前からありましたが、コロナ禍でお盆や彼岸に帰省できないケースが増え、あらためて脚光を浴びています。利用者も増えており、墓の掃除や手入れだけでなく、供花や写真・動画の撮影など、選択肢も広がってきています」

 最新技術との“融合”も起きている。全国の石材店約300店が加盟する全国優良石材店の会(東京都品川区)は8月から、「仮想現実(VR)」技術を使った墓参り代行サービスを始めた。

 墓の手入れをしたり、線香や花を供えたりする様子をスタッフが360度カメラで撮影。利用者は事前に届けられたゴーグルをのぞくと、墓参りの様子をよりリアルに見られる。同会の吉田岳会長はこう言う。

「ほとんどの方が『本当にお参りをしているみたいだ』と驚きます。新型コロナの感染拡大を受け、5月に墓参り代行サービスを始めましたが、掃除や献花を済ませたという写真や報告だけでは物足りないと考え、VRを使うことにしました。VRそのものが初体感の人も多く、好評です」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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