専門家の間では「行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進めば納税や許認可の手続きの効率が上がり、縦割り行政の弊害が減る」(りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一チーフ・ストラテジスト)などと歓迎の声が多い。

 早稲田大学の長内厚教授は「省庁横断的な課題が増えるなか、一日でも早く進めたほうがよいが、政治的には総選挙の日程がとりざたされ、来年も自民党の総裁選が控えています。大がかりな改革となるだけに、一貫して進める体制を整えられるかどうかが重要になります」と語る。

 東海東京調査センターの石野雅彦シニアアナリストは、冒頭の携帯電話料金値下げ問題に触れて「値下げによって携帯電話会社の収益力が落ち、投資や研究開発の余力が減れば、質が悪くなったり、次世代通信規格『5G』や次々世代規格の普及が遅れたりするおそれがある」と指摘。スガノミクスなる経済政策においても、民間ビジネスへの過剰な“介入”は避けるべきだとした。

 いずれにせよ、「経済全体をどう成長させるかの視点が必要」(石野さん)なだけに、菅政権には将来のビジョンを早く示してもらいたい。(本誌・池田正史、浅井秀樹)

週刊朝日  2020年10月2日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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