出口:現実には、実力がない男性の多くが、上司へのゴマすりとか飲みニケーションにつき合うことで偉くなっていますよね。日本社会全体で男性がゲタをはいているわけですから、女性もゲタをはいたらちょうどバランスが取れるんじゃないですか。日本の女性の社会的地位って、世界で121位とか、すごく低いじゃないですか。女性が頑張ってどんどん強くなれば日本はよくなると思いますね。

林:先生は日本生命にお勤めでしたけど、保険会社って女性のパワーで成り立ってるわけですよね。

出口:そうです。女性のおかげで生きてきた感じです。

林:契約件数のトップの人なんかは、会長の部屋にも自由に入れて、会長と対等の口がきけると聞いたことがあります。

出口:彼女たちは基本的には自営業者ですから、すごい人は、それはそれはすごいですよ。

林:先生は「60歳は人生の折り返し点にすぎない。本を読んで旅をして人と出会いなさい」ともおっしゃってますが、これまで1万冊以上の本を読んでこられたそうですね。そして「日本の男性は愛読書というと必ずといっていいほど司馬遼太郎をあげるから寂しい」とおっしゃっていて、それは私も同意見なんです。男性の経営者の方って、女性の作家は塩野七生さんしか知らないし、ふつうの小説とか恋愛小説を読んでくれたらうれしいなと思うんですけど。

出口:僕は恋愛小説はすごいと思っているんです。『トリスタンとイゾルデ』なんかは、恋愛小説の一つの極致ですよね。

林:わっ、あの難しい『トリスタンとイゾルデ』! 私なんかパラパラとめくったぐらいで、ちゃんと読んだことがないです。そういえば、どこか別の本で「教養を身につけるために絶対読みなさい」という本を30冊あげてらっしゃいましたけど、すごく難しい本ばっかりでした。

出口:たとえばアダム・スミスの『国富論』などは、学生時代にしか読めないじゃないですか。学生時代にちょっと背伸びして難しい本を読んでほしいと思っているのです。

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