出口治明・立命館アジア太平洋大学(APU)学長 (撮影/写真部・小黒冴夏)
出口治明・立命館アジア太平洋大学(APU)学長 (撮影/写真部・小黒冴夏)
出口治明さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・小黒冴夏)
出口治明さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・小黒冴夏)

 ライフネット生命を創業し、開業から4年で上場。生命保険業界でもっとも名を知られた元経営者・出口治明さんは、大学の学長に就任し、別府市を拠点に生活中です。立ち上げた会社を潔く引退し、“一業者”に転身。いとも軽やかに、次の道へと進む姿勢に通じるのは「おもしろい」が全て、という人生哲学。作家・林真理子さんがその素顔に迫ります。

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林:今、女性のほうが元気で、社会に出ていろんなことをやってますが、旦那さんが「また出かけやがって。メシはどうなってるんだ」とかいって足を引っ張ることが多いですよね。でも、私たちの年齢だとそこでケンカもできないし、仕方ないかなと思ってあきらめてしまうんです。

出口:この前、パネルディスカッションをしていたら、コロナで家で仕事をしているという男の人から「家の中に自分の居場所がない」という話が出たんです。そうしたら女性のパネラーが、「職場でも仕事をしなければ居場所がないでしょう。家庭を職場と考えたら、家事、育児、介護が仕事です。男性が家事、育児、介護をしなかったら、居場所がないのはあたりまえです。家庭では奥さまが社長で、ステイホームしているご主人は新入社員だから、『僕は何もできません。教えてください』といえば居場所ができますよ」と答えたのです。そのとおりですよね。

林:そのとおりですよ。一生懸命ひととおりのことを学習すべきです。

出口:僕はいま大分の別府に単身赴任中なんですが、料理のウデは間違いなく上がりましたよ。コロナで夜の街に出ていくわけにいかないので、自分でつくるしかない。

林:どんなものをおつくりになるんですか。

出口:最初はカレーから始めたのですが、最近では八宝菜とか酢豚とか、大分ですから、刺し身を買ってきてタレに漬けて「りゅうきゅう丼」(刺し身を甘辛い漬け汁につけてご飯にのせて食べる大分の郷土料理)とか……。

林:おいしそう。うちの夫とほぼ同じ年齢なのに、なんでこんなに軽やかなんでしょう。先生はこの本の中で「日本もクオータ制(議員や会社役員の女性の割合を一定数に定め積極的に起用する制度)を導入すべきだ」とおっしゃってますが、「それは男性差別だ。女性の比率を何パーセントと決めたら、実力がない女性も入ってくるじゃないか」という意見がけっこう根強いですよね。

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