ジャーナリストの田原総一朗氏(c)朝日新聞社
ジャーナリストの田原総一朗氏(c)朝日新聞社
イラスト/ウノ・カマキリ
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 自民党総裁に選ばれた菅義偉氏。ジャーナリストの田原総一朗氏は、菅政権を待ち受けるのは経済と安全保障という二つの課題だと指摘する。

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 9月14日に、石破茂氏、菅義偉氏、岸田文雄氏の3者が立候補して、自民党総裁選が行われ、この原稿が書店で披露される日には、菅氏の当選が決まっているだろう。しかし、こんなことは3者が立候補する以前から、いわば決まっていた。

 2年前、安倍首相が総裁選で3選された直後、私は1対1で安倍首相に会った。安倍首相は私に「田原さん、ポスト安倍は誰がよいと思う」と問うた。「真剣か」と聞くと、「真剣も真剣、ど真剣だ」と答えた。そこで、私はかねて考えていた「菅義偉」という名前を出した。彼は世襲ではなく、働いて大学に通った、エリートではない人物で、信用できるから安倍首相がずっと官房長官を続けさせたわけだ。そのことを言うと、安倍首相は「僕もそのとおりだ」と答えた。

 そして今年4月、安倍首相が緊急事態宣言を出した後にそのことを確かめると、「まったく変わっていない」ということであった。

 第2次安倍内閣は、史上最長となったために、多くのマスメディアがまるで安倍内閣をたたかないと存在理由がないかのように厳しくたたいている。たしかに森友・加計疑惑を始め、問題は少なからずある。だが、自民党総裁に返り咲いて、6回の国政選挙すべてで勝っている。その意味では、先進国の中で最も安定していた政権だとも言える。

 今、この国は深刻な問題をいくつも抱えている。

 一つは経済問題である。中西宏明経団連会長を始め、私が会った有名大企業の経営者たちはいずれも、現在の産業構造では日本企業は10年持続できないと、強い危機感を抱いている。持続可能にするためには産業構造を抜本的に改革しなければならないと言い、すでに少なからぬ企業が取り組んではいるが、成功できるかどうか。

 さらに重要な問題は、日本の安全保障である。日本の歴代首相は例外なく、日本の安全保障は米国に委ねることにしてきた。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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